2004年12月21日

インプットすべき情報とは何か◆『ハウルの動く城』2

12月21日(火)晴れ / 『ハウルの動く城』(TOHOシネマズ木曽川)

この前、「このBlogを立ち上げてから、テレビを観ない生活になった」と書いた。どのくらい観なくなったかというと、平日の朝、出掛ける前の時計代わりに点ける以外は、スイッチすら入れないくらいのレベルだ。休日にも、本当に観たい番組の録画を消化するほかには、「なんとなく」スイッチを入れるということが無くなった。前は、ヒマを持て余すように何となく観ていたバラエティ番組も、連続ドラマも、スカパーの音楽番組も、ほとんど観なくなってしまった。

昔、自分で映画の感想を書いたサイトを立ち上げていた時もそうだった。私は音があると集中してモノが書けないので、アウトプットの作業に徹している時は、一切の情報を遮断してしまうクセがあるのだ。そのサイトを放棄してからの4年間は、「のほほん」とインプットのみの生活を楽しんでいた。アウトプットする作業はとても大変なことだと分かっているのに、気づいたらいつの間にか、またこんな生活に戻ってきてしまっている。

これでいいのだろうかと思うことがある。確かにモノを書くのが好きだからやっているのだけれど、私はアウトプットに時間を費やし過ぎて、情報をインプットすることをおざなりにしているのではないだろうか。何年も前から買い続けている情報誌「ぴあ」でさえも、ここ2〜3冊は一度もページを開かないまま捨てている。こんな調子では世の中について行けなくなってしまうのではないだろうか。今日はレイトショーで『ハウルの動く城』を観に行く予定だったけれど、たまには家でのんびり、くだらないテレビでも観てインプットに徹してみるのもいいかもと思った。

家に帰って、テレビをつけてみた。くだらないバラエティ番組をやっていた。…本当にくだらない。以前はこういう番組を好んで観ていたはずなのに、全く面白いと感じられない。観ていたら、時間がもったいなく感じてきてスイッチを切った。何だか悶々としてきた。何かをインプットしたくて仕方ないのに、私の求めているものとは違う。
「映画でも観に行くかな…」
そう思って、上映時間ギリギリの『ハウルの動く城』のレイトショーに駆け込んだ。私には結局、こっちの方向しか残されていないのだろうか。



帽子屋の18歳の娘・ソフィーは、街で偶然ハウルという魔法使いに出会い、危ないところを助けてもらう。美女の心臓を食べると噂されていたハウルに、ソフィーは心を奪われた。家に戻ったソフィーの元に荒地の魔女と名乗る女が訪れ、ソフィーは90歳の老婆に姿を変えられてしまう。「ハウルによろしくね」そう言って去って行った荒地の魔女の言葉を受けて、ソフィーはハウルが住んでいるという、"ハウルの動く城"へと向かって歩き始める。

宮崎アニメはどれを観ても、いまひとつピンと来ない私なのだが、前作『千と千尋の神隠し』は大好きな作品だった。宮崎アニメ独特の"説教臭さ"をそれほど感じることもなく、1人では何も出来なかった少女が、不思議な世界での様々な出会いと体験を通して大きく成長していく姿を描いた、とても素晴らしい作品だったと思う。でも、この『ハウルの動く城』には、またピンと来るものを感じなかった。

18歳の主人公・ソフィーは、90歳の老婆に姿を変えられても、結構すんなりとそれを受け入れる。かなりのポジティブ思考を自覚している私から見ても、理解し難いほどのポジティブっぷりだ。そんな少女がそれまでなぜ、内気で地味な生活をしていたのかが分からない。ハウルに心を奪われただけで、そこまで性格が変わってしまうのだろうか。それから、後半でソフィーがハウルに対して「愛してる」と言うシーンがある。その言葉を聞いた時、私は激しく引いてしまった。私は「好き」と「愛してる」は違うと思う。たったあれだれけの関わりの中で、簡単に「愛してる」と言えてしまうものなのだろうか。とても大切なシーンであったはずなのに、何故か軽々しく感じられて仕方なかった。

『千と千尋の神隠し』は主人公・千尋の成長の物語だった。『ハウルの動く城』は、ソフィーと出会ったことによって、ハウルが成長する物語だ。でもハウルは脇役であり、スポットは常に主人公・ソフィーに当てられている。そのため焦点が定まらず、ストーリーが中途半端になってしまっている。その上、宮崎アニメ独特の"説教臭さ"を無理矢理に押し込んだために、最後まで何が訴えたいのかがはっきりしない作品となってしまった。こういう作品では、ラストにすがすがしさが残らなければいけないのだろうと思うが、残念ながら、私はそういう気持ちにはなれなかった。

『千と千尋の神隠し』とキャラクターが被っているのも気になった。ソフィーに助けてもらってから、誠心的に彼女に尽くす「かかしのカブ」は「カオナシ」と被るし、ソフィーになつく老犬「ヒン」は、「坊ネズミ」と「ハエドリ」に被る。「荒地の魔女」は、「湯婆婆」ではなく「坊」だった。魂のない「ハウル」が「ハク」と被るのは、言うまでもない。ここまでくると、何だか『千と千尋の神隠し』で燃え尽きた宮崎駿が、「やっつけ仕事」で作った映画のようにさえも感じられる。

ソフィーの声を担当したのが、倍賞千恵子。90歳の老婆の声は良かったにしても、18歳の役をやるのはやっぱり無理なんじゃない? ハウル役には噂の木村拓哉。お決まりの"キムタク喋り"ではなかったにしろ、滑舌の悪さが気になった。唯一素晴らしいと思ったのは、マルクル役の神木隆之介くん。この子は本当に天才なんじゃないかと思う。彼のセリフ「待たれよ」は最高だった。



私はこのBlogを立ち上げたことで、極端に情報をインプットする時間が減った。でも、インプットなしではアウトプットすることは出来ない。色んなモノを見ること。多くの人と触れ合い、話をすること。それらが良質のものであるからこそ、私を刺激してくれる。制約された時間の中で、出来るだけ良質の情報をインプットすること。私はこの2ヶ月半の間、無意識にそれを続けてきたのだということに気が付いた。くだらないテレビを無理矢理に点ける事は、今の私には全く意味がない。

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