2005年02月17日

素人にでも書けそうな単純なストーリー◆『きみに読む物語』2

2月17日(木)TOHOシネマズ木曽川にて

レイトショーで『きみに読む物語』を観に行く。「『マディソン郡の橋』を越え、全米1200万人が愛に震えた」というのがキャッチフレーズになっている。昨年大ヒットした『世界の中心で、愛をさけぶ』から、映画業界の"売り"は、どうやら"純愛"らしい。『セカチュー』『いま会い』『僕カノ』に続いて、「2005年の純愛は『きみ読む』から」などとも宣伝している。『マディソン郡の橋』も『セカチュー』も『いま会い』も『僕カノ』もダメだった私に果たしてこの映画は受け入れられるのだろうか。純愛を前面に打ち出した宣伝効果なのか、平日レイトのTOHOシネマズ木曽川にしては意外と客入りはよく、そのほとんどがカップルばかりだ。私の両サイドもカップル、前もカップルという状態。うっかりバレンタインデーなんかにこの映画を観に来たら、きっと当てつけられて大変だったろう。

療養施設で暮らす、ひとりの老人性痴呆症の女性(ジーナ・ローランズ)の元に定期的に通っては、物語を読み聞かせる老人男性(ジェームズ・ガーナー)が居た。彼が読む物語は、1940年、渡り鳥が飛来する美しい自然に囲まれた土地に一家でひと夏を過ごしにやってきた17歳のお嬢様・アリーと、その町に住み、木材置き場で働く青年・ノアの恋の物語だった。

観終わった時の感想を一言で言うと、「なに、これ?」 純愛映画の王道なのだろうけど、あまりにも王道すぎて絶句してしまった。これくらいのストーリーなら、私にだって思いつく。いや、私ならあちこちに毒を盛りまくって、もっと面白い話にしちゃうのに。

あまりにも単純なストーリーで、ネタばれなしでは感想は書けそうにないので、これ以下は完全ネタばれで。

老人男性が、痴呆症の老人女性に読み聞かせる話はこう続く。

良家のお嬢様だったアリーが、肉体労働者のノアとの恋を両親に許してもらえるはずもなく、二人は"お約束"のように引き裂かれる。やがて7年の歳月が経ち、アリーの前にお金持ちで優しくてハンサムな、もうひとりの男性が現れる。既にノアのことを諦めていたアリーは、その男性に恋をし、結婚を決意する。しかし結婚式の直前、偶然に現在のノアのことを知ってしまったアリーは、昔の恋に決着をつけるためにノアの元へ。7年ぶりに再会したノアとアリー。アリーはノアを選ぶのか、それとも婚約者の元に帰るのか…。

読んだことはないけど、"ハーレクインロマンス"みたいな感じ?(←イメージ)書いていてこっちが恥ずかしくなってくるくらいベタなラブストーリーだ。

結論から先に言うと、物語を読んで聞かせているのが老いた日のノア自身で、老人性痴呆で過去のことは一切忘れてしまった女性がアリー。ノアは、アリーに出会った頃の自分たちのストーリーを読み聞かせることで、彼女が失った自分を取り戻してくれるという奇跡を信じているのだ。でも、これは映画の冒頭部分で既にバレている。問題は、読み聞かせる物語の最後で、若き日のノアとアリーが結ばれるか否かということであり、それによって、現在のノアとアリーがどういう関係であるかを知ることが出来る。そして、それは最後まで謎のまま引っ張っておくべきことのはずなのに、映画の中盤で現在のふたりの関係はあっさりとバラされてしまう。なんと、ノアとアリーの間に出来た子供と孫が登場するのだ。もう、物語を最後まで聞かなくても、アリーがどっちを選ぶかバレバレじゃん…。

全てが予想通りに展開していったストーリーだったが、ひとつだけ意外だったのは、ノアが読んだ"物語"を書いたのはノアではなく、実はアリーだったってことくらいかな。

この映画には、"悪人"は一切登場せず、全てが人間の美しい部分だけで語られている。せめて、アリーの婚約者がもっと嫌なヤツだったら、「ノア、頑張れ!」と応援する気分にもなるのだろうけれど、その婚約者もすごくいい人なだけに、気まぐれに昔の恋人の元に戻ってしまったアリーに捨てられた彼が可哀想になってしまった。でも、ここでアリーが婚約者の方を選んだら、「やっぱり財力に魅せられたのね」と観客は思ってしまうんだろうな。私には、お嬢様暮らしのアリーがノアを選び、貧乏暮らしに耐えて行けるかどうかの方が心配だった。

最後まで映画を観て思ったことは、なぜ"出会い"の部分だけがそんなに大切なんだろうということだ。ノアとアリーはそのあと50年以上を一緒に過ごし、子供を産み、育ててきたはずなのだから、どちらかと言えば、そっちを語った方がいいんじゃない?と思ってしまうのは、やっぱり私が"純愛路線"の映画に向かないからなのだろうか。

それにしても、エンドロールあとに出てくるケミストリーのコメントはなんなんでしょ。あれで、余韻も何もかき消されてしまう。配給会社は一体何を考えているだろうか。あまり面白くない映画だったけど、あれで一気に脱力感が増してしまった。

※映画の余韻に浸りたい人は、エンドクレジットのピアノ曲が終わったら、ケミストリーの曲が掛かる前に、すぐに席を立つことをお薦めします。

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この記事へのコメント

1. Posted by swallow tial    2006年03月10日 22:13
はじめまして。
とてもわかりやすいレビューですね。
わたしも、この映画の満足度が低かったので
うなずきながら記事を読ませていただきました。
アリーがノアを選んだことよりもその後の生活の方が気になりますよね。
明らかにそっちの方が波乱万丈の気がします。
いろいろなブロガーさんの記事を読ませてもらっていますが、
思いのほか評価が高いのでわたしの感性がおかしいのかと疑ってしまいました。
2. Posted by 桂木ユミ    2006年03月11日 19:48
>swallow tialさま
こんにちは。
ようやく同じ意見の方にコメントをいただけて、私も嬉しいです。この映画が、まさかこんなに高い評価を得るなんて、観ている最中は思ってもいませんでした。世の中では、こういう単純な純愛ものがウケるのでしょうか。純愛ものでも、「ガツン」とした衝撃を受けるような作品が好きな私には、ダメダメの映画でした。

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