2005年03月25日

"謎"が効果的な演出をする、少年のロードムービー◆『アイ・アム・デビッド』4

3月25日(金)名演小劇場にて

第2次大戦終戦後にも、東ヨーロッパには収容所が400以上あった。共産主義国家に反対する人間たちは強制収容所に入れられ、過酷な労働を強いられていたのだった。父親が反社会主義者だったデビッドも、幼い頃に両親と引き離され、ブルガリアの収容所で暮らしていた。もはや両親の記憶はほとんどなく、笑うことすら忘れてしまっていた12歳のデビッドには、「こんな所で生きてて、何になるの?」と、そんな疑問だけが募る毎日だった。ある晩、デビッドは監視兵の目をくぐり抜け、収容所を逃げ出す。「この手紙を持って、誰にも捕まらずにデンマークに行け」デビッドにそう助言し、脱走の片棒を担いだ男が居たのだ。デビッドはその男の言葉通り、ブルガリアからギリシャの国境を抜け、イタリア行きの船にもぐり込んで海を渡り、イタリアの海岸に上陸する。しかし、デンマークはまだ果てしなく遠い。デビッドはデンマークに辿り着けるのだろうか。デンマークには一体何があるのだろうか。


原作はデンマークで1963年に出版された世界的ベストセラー小説で、そのタイトルは"North to Freedom"。こちらの方が、映画の内容を端的に表しているような気がする。幼い頃に両親と引き離され、収容所で強制労働をさせられていた12歳の少年が、自由を求めて収容所を脱走し、北へ北へと向かう物語だ。

この物語には様々な"謎"が隠されている。デビッドを逃がした男は誰なのか。彼がデビッドに渡した封筒には、何が入っているのか。デビッドは、なぜデンマークに行かなければならないのか。フラッシュバックの多用が"謎"を深め、観ている者を引き付ける。

この作品の監督・脚本を務めたポール・フェイグという人は、私の好きな『すべてをあなたに』(トム・ハンクス監督作品)には俳優で出演していたらしい。プロフィールを見ても、メジャーな監督作品はそれほどないようだが、この謎に満ちた少年のロードムービーを見事に構成し、感動の作品へと仕上げている。

主人公デビッドの役は、12歳のイギリス人少年ベン・ティバーが演じ、素晴らしい演技で、様々な映画賞の最優秀新人賞や最優秀男優賞を獲得している。また、収容所でデビッドが唯一心を許せる友人・ヨハンの役をジム・カヴィーゼルが演じ、地味ながらも心に残る、良い演技をしている。彼はこの作品での演技が評価されて『パッション』のキリスト役を演じることになったのだそうだ。

「誰も信じるな」そう言われて脱走した12歳の少年は、行く先々で様々な人と出会い、運と知恵と実行力で苦難を乗り越えて行く。お金を持っていない彼が、無欲の奉仕によって生きるための糧を得る。人との出会いが、笑うことを忘れてしまった少年にそれを思い出させ、人の心のあたたかさが、やがて彼に人を信じる気持ちを呼び覚まさせる。ネタばれになってしまうので詳しくは書けないが、ラストシーンは涙が止まらなかった。

私は予告編も観ずに、一切の情報を入れない状態で観たのだけれど、あとで公式サイトに行ってみたら、ストーリーが最後まで書いてあって驚いた。デンマークでは、教科書の中で紹介されているほど有名な話だからなのだろうか。映画を観れば、監督は明らかに"ミステリー"にしようとしていることが分かるのに、全部"謎"を明かされてしまったら、面白さは半減するはずだ。公式サイトやパンフレットに書かれているストーリーは、読まずに観た方がいいと思う。


『アイ・アム・デビッド』公式サイト

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1. アイ・アム・デビッド(劇場)  [ 独り静かに遊ぶ部屋 ]   2005年03月30日 07:01
「アイ・アム・デビッド」を観てきました。 ブルガリアの強制収容所から脱出し、デンマークへ向かう少年デビッド。 数々の苦難を乗りこえながら北をめざす道中で、デビッドを待ちうけていたのは、さまざまなひとたちとの出会いでした。 最初は、笑顔を浮かべることすらでき
2. アイ・アム・デビッド I AM DAVID  [ travelyuu とらべるゆうめも MEMO ]   2005年09月04日 10:49
ベン・ティバー、ジム・カヴィーゼル主演 第二次世界大戦が終わったブルガリア まだ共産党強制収容所があった そこに物心つく前に収容された少年が自由を求め家族を求めて脱走 少年は収容所内の事しか知らず 自由な世界の事は始めての体験になる 収容所でヨハン(ジム...
3. アイ・アム・デビッド  [ とりあえずな日々(仮) ]   2005年09月22日 02:32
5 アイ・アム・デビッド 1950年代、第2次世界大戦直後のブルガリアでは戦争が終結したにも関わらず依然として共産主義国が周辺諸国に圧力をかけていた。 幼い頃に家族と引き離された12歳のデビットも強制収容所での過酷な労働と看守の暴力に耐える日々を過ごしていた。 だ...
4. アイ・アム・デビッド  [ cinema note+ ]   2005年12月14日 01:44
I AM DAVID 2004年 アメリカ ブルガリアの収容所で育った12歳のデビットが、収容所を脱走し一人ではるかデンマークへと旅をする物語。 収容所で育ったため、笑い方を知らず、??
5. アイ・アム・デビッド  [ ホームシアター映画日記 ]   2006年02月10日 09:13
●映画の満足度・・・★★★★★★★★☆☆8.5点 主人公のデビッドは1通の手紙を手に、強制収容所を脱走してデンマークへ旅立つのですが、その目的を知りません。 最初は手紙を渡された人物に言われたとおりに、とにかく北へ北へと逃げるように行く道を急ぐデビット...
6. アイ・アム・デビッド  [ impression ]   2006年02月18日 00:05
デンマークで出版され、アメリカではロングセラーとなっているアン・ホルムの同盟小説の映画化。1950年代、共産主義が支配するブルガリア。幼いころに家族と引き離され、過酷な労働を??
7. アイ・アム・デビッド  [ 色即是空日記+α ]   2006年02月19日 22:51
これは良かった!!   世の中良い人ばかりではない。 でも悪い人ばかりでもない。 第二次大戦後のブルガリアの収容所で育ったデンマーク人の少年・デビッド。過酷な日々を過ごしていた彼は、ある日収容所を脱走し、単身デンマークへと向かう。   ちょっと「母....
8. 映画『アイ・アム・デビッド』  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2006年02月20日 01:46
原題:I am David 1952年ブルガリア強制収容所の苛酷な強制労働のなかで育った、笑うことを知らない寡黙な12歳少年、収容所からの脱走と逃避行が綴られる・・。 デビッド(ベン・ティバー)は、収容所で自分の身代わりに死んだヨハン(ジム・カヴィーゼル)の言...
9. 映画評「アイ・アム・デビッド」  [ プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] ]   2006年05月04日 16:50
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2003年アメリカ映画 監督ポール・フェイグ ネタバレあり
10. <アイ・アム・デビッド>   [ 楽蜻庵別館 ]   2006年05月07日 01:42
2003年 アメリカ 92分  監督 ポール・フェイグ 脚本 ポール・フェイグ 撮影 ロマン・オーシン 音楽 スチュワート・コープランド 出演 デビッド:ベン・ティバー    ヨハネス:ジム・カヴィーゼル    ソフィ:ジョーン・プローライト    収容所長:...
11. アイ・アム・デビッド  [ Aのムビりまっ!!!(映画って最高☆) ]   2006年05月12日 23:37
    評価:★9点(満点10点) 監督:ポール・フェイグ 主演:ベン・ティバー ジム・カヴィーゼル ジョーン・プロウライト 2004年 93min 1950年代、第2次世界大戦直後のブルガリアでは、戦争が終結した にも関わらず、依然として共産主義国...

この記事へのコメント

1. Posted by cop    2005年03月30日 07:10
moco fleeks さん、はじめまして!
トラックバックいただいていました。
こちらからもトラックバックはらせていただきましたので、これからもよろしくお願いします。

たしかに、公式サイトではストーリーがほとんどすべて公開されていて、やや問題かもしれませんね。
moco fleeks さんのおっしゃるとおり、少年の心の成長をミステリー仕立てでみせる、というところがいいのに・・・。
ぼくのサイトでも、断り書きをつけたうえでかなり内容にふれていますが、もうすこし慎重に書いたほうがよかったかな・・・?
2. Posted by moco fleeks    2005年03月30日 20:27
こちらこそ、よろしくお願いします。
こういう良質の小品について語り合える方は少ないので、嬉しいです。

明らかに、製作サイドと宣伝サイドの意図が違っていることってありますよね。
宣伝サイドも、それくらいのことは映画を観て解らないのかな、と思ってしまいますが…。

「ねたばれ」と書いてあればいいと思いますよ。
私も、どうしてもそこに触れないと書けない時はそうしています。

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