2005年03月25日

人生には「寄り道」も必要◆『サイドウェイ』4

3月25日(金)TOHOシネマズ木曽川にて

この前、中盤の約1時間を完全に眠ってしまったため、もう一度観に来なきゃと思っていた『サイドウェイ』なのだけれど、今日限りでレイト上映が終わってしまう。地味な作品だとはいえ、仮にもアカデミー賞の作品賞にノミネートされた映画で、そんなに上映館も多くないというのに、ちょっと扱いが低すぎやしないかい?観られるとしたら、今日が最後のチャンスかもしれないので、レイトショーに出掛けた。本日2本目の映画鑑賞となる。


中年の国語教師マイルスは、2年前に離婚した妻のことを忘れられない。小説家になる夢を持っている彼だったが、出版社に原稿を送ったもののその返事もないという、うだつが上がらない人生を送っていた。そんなマイルスにも、ひとつだけ取り柄があった。ワインに関してだけは、誰にも負けないほどの知識と、それを見極める味覚を持っていたのだ。マイルスは、結婚を1週間後に控えた友人ジャックと共に、ワインとゴルフ三昧の気ままな男ふたり旅に出掛ける。しかし、俳優でプレイボーイのジャックは、それを"結婚前の最後のナンパ旅行"のつもりでいた。


(以下、多少のネタばれが含まれます)

結婚に失敗した人間は人生半ばにくると、「自分の人生、これでいいのだろうか」とふと思うことがある。結婚していた時には、しがない国語教師という立場だけで満足出来たかもしれない。でも、離婚してひとりきりになった時、マイルスは「小説家になりたい」という昔の夢を掘り返し、人生にもう一花咲かせてみたいと思った。書いたのは自分の体験を元にしたフィクション。小説家になる夢が叶えば、もしかしたら離婚した妻が自分を見直して戻って来てくれるんじゃないかという希望も持っていたに違いない。しかし旅の途中でマイルスは、妻と寄りを戻す夢も、小説家になる夢も打ち砕かれる。そんな中で、新たにひとりの女性と出会い、人生に希望の光が見えてくる…という物語だ。

以前、私は『ネバーランド』の感想で「作家は、"誰か"に自分の言葉とイマジネーションを伝えたくてモノを書く」と書いた。マイルスも、別れた妻に読んでもらいたくて、それを書いていたのだと思う。妻の居ない寂しさを紛らわそうと、長い長い小説を書き続けていたマイルスの姿が目に浮かぶ。そしてそれを書き終えた時、ひとつの達成感と共に、また妻への思いが募り始める。マイルスが車に積んで持ち歩いていた大量の原稿によって、映画では語られていない部分を読み取ることが出来る。マイルスは、もし妻に会うことが出来たら、それを渡して読んでもらおうと思っていたに違いない。しかし、マイルスがその原稿を渡したのは別の女性だった。「いい作品だがマーケティングが見込めない」と、やんわりと断ってきた出版社とは裏腹に、彼女はマイルスに飛びきりの賛辞を送る。そしてマイルスは、自分のことを本当に理解してくれる女性の存在に気付くのだ。

一方、ナンパ男のジャックも俳優とはいえ、代表作は何年も前の昼ドラだけで、今は、CMのナレーターの仕事くらいしかしていない。それでも、昔の微かな栄光にすがりながら、モテ男であることにいい気分になっている。40歳近いというのに、まだ大人になりきれない。マイルスも情けない男だけれど、そんなジャックも相当に情けない男だ。しかし、ナンパが原因で大変な事態を引き起こし、それが婚約者への愛を目覚めさせる。一見、やりたい放題のはちゃめちゃな旅だったけれど、この旅の経験で、きっとジャックも変わるのだろう(…と信じたい)。

"sideways"=「横を向いて」
公式サイトでは、これを「人生の寄り道」と表現している。1週間の「寄り道」で、行き詰まった人生を変えてしまうほどの経験をしてしまうことがある。「寄り道」をしなければ、見つけることが出来ないものもあるのだ。それが、特にマイルスやジャックと同じ年代の独り者には心に響く。地味だけれど、静かに心に残る作品だった。

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 『サイドウェイ』  [ ぺぺのつぶやき ]   2005年03月29日 01:20
2004年 アメリカ=ハンガリー 130分 監督 アレクサンダー・ペイン 出演 ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、サンドラ・オー 「サイドウェイ」公式サイト→ココ ストーリー 人生と恋とワインをめぐるロード...
2. 自己嫌悪のダメ男が人生を見直す旅に  [ 人生はお伽話もしくは映画のよう ]   2005年03月29日 11:38
「サイドウェイ」 最近たまに落ち込むことといえば、なかなか理想としている自分になれないこと。私の場合は内面的な話じゃなくって、仕事のことなんですが。年を経るごと
3. 「サイドウェイ」  [ the borderland ]   2005年03月29日 22:45
離婚から立ち直れない作家を目指す教師マイルス(ポール・ジアマッティ)が親友で1週間後に結婚予定の俳優ジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)と一緒に結婚祝いを兼ねた旅行に出掛ける。マイルスはワイン&ゴルフ、ジャックは独身最後に羽目を外しまくりたい。2人の
4. サイドウェイ Sideways  [ ネコと映画と私 ]   2005年04月07日 20:06
昨日ナビオTOHOプレックスで見た映画。 今年になって更新頻度がやたら落ちていて、映画のエントリーも「恍惚」以来全然してなかった。 先週は「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」を、その前は「 ホワイト・ライズ」を、その前は「ステップフォード・
5. SIDE WAY  [ No Cinema,No Life ]   2005年04月14日 17:05
う〓んいまいち共感できなかった内容でした(悲) 映画の作り自体は悪くないと思うのですが、ダメ男二人のロードムービーっていうと「ラスベガスをやっつけろ」あたりはすごい好きでデップもデルトロも最高☆と思ったものですが、今回の二人にはあまり引き込まれなかった
6. 『サイドウェイ』〜酔生夢死を避ける道〜  [ Swing des Spoutniks ]   2005年04月16日 20:57
『サイドウェイ』   日本公式サイト アメリカ公式サイト ブコウスキー『町でいちばんの美女』『パルプ』(新潮文庫) 監督:アレクサンダー・ペイン出演:ポール・ジアマッティ トーマス・ヘイデン・チャーチ    ヴァージニア・マドセン サンドラ・オー
7. サイドウェイ  [ 或る日の出来事 ]   2005年04月17日 01:06
(c)2004 Twentieth Century Fox, All rights reserved.SIDEWAYS2004年 アメリカ・ハンガリー作品監督 アレクサンダー・ペイン出演 ポール・ジアマティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、サンドラ・オー後ろの席のほうから「半券でタダになるか
8. 「サイドウェイ」 男の方が尾を引くんですよね  [ 映画の話をしませんか? ]   2005年04月30日 14:52
離婚して2年。 いまだショックから立ち直れない小説家志望の英語教師マイルス。
9. サイドウェイ  [ まつさんの映画伝道師 ]   2005年05月09日 09:38
第85回 ★★★★☆(劇場) (ヴァージニア・マドセンに対するファン馬鹿な文面ばかりなので、ご注意あそばせ)  眩しいカリフォルニアの陽射しとワイン、友人とおしゃべり。  これは大人の「青春」映画だ。  若者の「青春」映画に悩みが付き物のように
10. 「サイドウェイ」は懐かしの風景  [ 万歳!映画パラダイス〜京都ほろ酔い日記 ]   2005年09月30日 01:18
 先日「シンデレラマン」を観た時、トレーナー役のポール・ジアマッティがいい味を出していた。それで思い出したのが彼が主演している「サイドウェイ」。初春に公開された時、観ようとして、チャンスを逃していた。興行成績が不振だったのだろう、アッという間に上映が終わ....
5 「サイドウェイ」を観ました。 面白い! とにかく良い! かなり好き系の話なんだけど、なんなんだろう、テンポもゆったりしていて悪いような気もするんです。 ストーリーもワイン好きの作家と女好きの俳優がちょっとヨコ道(サイドウェイ)にそれた一週間ってだけなんだ...
12. サイドウェイ−映画を見たで(今年131本目)−  [ デコ親父は減量中(映画と本と格闘技とダイエットなどをつらつらと) ]   2005年10月15日 02:14
監督:アレクサンダー・ペイン 出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、サンドラ・オー    評価:96点(100点満点) 公式サイト 楽しかった。 こんなにニコニコしながら映画を見たのは久しぶりかも...
13. サイドウェイ−映画を見たで(今年131本目)−  [ デコ親父は減量中(映画と本と格闘技とダイエットなどをつらつらと) ]   2005年10月15日 02:15
監督:アレクサンダー・ペイン 出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、サンドラ・オー    評価:96点(100点満点) 公式サイト 楽しかった。 こんなにニコニコしながら映画を見たのは久しぶりかも...
14. SIDEWAYS  [ Comment allez-vous?~アメリカdeスローライフ~ ]   2005年10月19日 23:31
2004年度、全米の各映画賞のタイトルをさらったのは・・・。 この映画『Sideways』でしたねぇ~     各受賞はこちらでチェックして見て下さいねぇ~連 ↑コレだけ話題となったこの映画を、私はあまり興味を持っていなかった・・・。 それは、特に目....
15. サイドウェイ  [ いつか深夜特急に乗って ]   2005年11月25日 21:54
「サイドウェイ」★★★★(盛岡フォーラム3) 2004年アメ
16. サイドウェイ  [ cinema note+ ]   2005年12月16日 02:12
サイドウェイSideways 2004年 アメリカ・ハンガリー 最初はDVDのジャケットからオシャレな男女の恋の話?とか思ってたけど、始まると、えっ?冴えない中年男の2人連れ旅行っ 
17. 映画『サイドウェイ』  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2006年05月26日 01:11
原題:Sideways 中年の親友二人、ワインとゴルフ三昧に浸る一週間の人生の寄り道の旅は・・二人に何をもたらしたのか・・抱き続けた夢は果たして実現するのか・・ 小説家志望のバツ一中年、国語教師マイルス(ポール・ジアマッティ)が、かつての人気タレントでプレ...
18. 映画評「サイドウェイ」  [ プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] ]   2006年05月31日 11:12
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2004年アメリカ映画 監督アレクサンダー・ペイン ネタバレあり
19. <サイドウェイ>   [ 楽蜻庵別館 ]   2006年06月14日 01:46
2004年 アメリカ 128分 原題 Sideways 監督 アレクサンダー・ペイン 脚本 アレクサンダー・ペイン ジム・テイラー 撮影 フェドン・パパマイケル 音楽 ロルフェ・ケント 出演 マイルス:ポール・ジアマッティ    ジャック:トーマス・ヘイデン・チャーチ ...
20. サイドウェイ/アレクサンダー・ペイン  [ 文学な?ブログ ]   2006年07月15日 17:42
ワインが飲みたくなる映画です。そして、友情とは何かを考えた作品でした。 小説家を目指している国語教師マイルスは、親友ジャックとともに一週間の旅に出ます。ジャックは一週間後の結婚を前に、最後の女遊びをしようと意気込んみますが、マイルスは気乗りがしません。...
21. サンドラ・オー -サイドウェイ-  [ ぐぅちゅえんの見たり読んだり ]   2006年10月11日 08:07
なかなか面白いと思う人と 思わない人。はっきりと分かれて しまいそうな作品。 ぐぅちゅえんは、主人公マイルスの 行動に興味津々。女性への想いを 引きずる所なんか、女々しいと感じる 人も多いだろうけど、ぐぅちゅえんは 似ているタイプかな。 彼のような行動...

この記事へのコメント

1. Posted by ボー・BJ・ジングルズ    2005年04月17日 01:16
こんにちは。TBもさせていただきました。
書いた小説は、奥さんに読んでほしかった。私もそう思います。でも、違う女性の手に渡った。
ちょっとした人生の寄り道で、彼は変化を得て、彼の友人もまた、きっとどこか、変わっているのでしょうね。
2. Posted by moco fleeks    2005年04月17日 12:48
>ボー・BJ・ジングルズさま

こんにちは。TBありがとうございました。
こちらからもさせていただきました。
旅に乗って行った車に載せた、膨大な量の原稿用紙。
普通、あんなもの持ち歩かないですよね。
それにもきっと「目的」があったのだろうと思って観ていました。

プレイボーイのジャックも、彼女を失うことになるかもしれない危機に瀕して、ようやく大切なことに気付いたのでしょうね。
泣きながら「プリーズ」と懇願する顔が印象的でした。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
新作映画満足度

【満足度の基準】
注:映画の良し悪しではなく、
桂木ユミの満足度です。

★★★★★「すごくいい」
★★★★「いい」
★★★「まあまあ」
★★「金返せ」
★「時間を返せ」

【2006年8月】
ラフ ROUGH★★★
ゆれる(2回目)★★★★★
美しい人★★★
僕の、世界の中心は、君だ。★★★
花田少年史★★★
佐賀のがばいばあちゃん★★★
ゆれる★★★★★
トランスアメリカ★★★★
ユナイテッド93★★★★
パイレーツ・オブ・カリビアン2★★
幸せのポートレート★★
時をかける少女★★★★★
ゲド戦記★★

【2006年7月】
ラブ☆コン★★
ハチミツとクローバー★★
日本沈没★★★
スーパーマン・リターンズ★★★
タイヨウのうた(2回目)★★★★
ブレイブ・ストーリー★★
やわらかい生活★★★
ステイ★★
カーズ(字幕版)★★★

【2006年6月】
着信アリ Final★★
ホワイト・プラネット★★
M:I:3★★★
DEATH NOTE(前編)★★★★
LIMIT OF LOVE 海猿★★★★
バルトの楽園★★★
インサイド・マン★★
オーメン★★★
トリック劇場版2★★★
初恋★★★
花よりもなほ★★★
ダ・ヴィンチ・コード★★
間宮兄弟★★★★
ポセイドン★★★
トランスポーター2★★★
デイジー★★★
GOAL!★★★★

【2006年5月】
タイヨウのうた★★★★
夢駆ける馬ドリーマー★★★
嫌われ松子の一生★★★★
かもめ食堂★★★★
ナイロビの蜂★★★★★
ピンクパンサー★★★★
Vフォー・ヴェンデッタ★★★★
チェケラッチョ!!★★★
グッドナイト&グッドラック★
ぼくを葬(おく)る★★★

【2006年4月】
陽気なギャングが地球を回す★★
明日の記憶★★★
ニュー・ワールド★★
ホテル・ルワンダ★★★★
ブロークバック・マウンテン★★★
ファイヤーウォール★★★

【2006年3月】
白バラの祈り★★★★
南極物語★★★
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!★★★★
子ぎつねヘレン★★★
シリアナ
クラッシュ(2回目)★★★★★
イノセント・ボイス-12歳の戦場-
★★★★
ウォーク・ザ・ライン/君につづく道★★★

【2006年2月】
クラッシュ★★★★★
スパングリッシュ★★★★
カミュなんて知らない★★★★
ブラックキス★★
ミュンヘン★★
ジャーヘッド★★★★
ピーナッツ★★★★
天使★★★★
男たちの大和/YAMATO
★★★★
レジェンド・オブ・ゾロ★★★

【2006年1月】
オリバー・ツイスト★★★★
アメノナカノ青空★★★
博士の愛した数式★★★★
ロード・オブ・ウォー★★★
歓びを歌にのせて★★★
スタンドアップ★★★★★
プライドと偏見★★
キング・コング★★
THE 有頂天ホテル★★★★
SAYURI★★★
ディック&ジェーン 復讐は最高!★★★
チキン・リトル★★★


これ以前のものはこちら
(旧作もこの中にあります)
月別アーカイブ