2005年04月04日

人間の生命力を知る、半ドキュメンタリー◆『運命を分けたザイル』3

4月4日(月)TOHOシネマズ岐阜にて

今日も昨日に引き続き、TOHOシネマズ岐阜に『運命を分けたザイル』を観に来た。やっぱり今日も「一名様ですか?」と聞かれるんだろうなー、と思いながら、「運命を分けたザイル」と言って、1000円札1枚とシネマイレージカードを出した。するとそのバイトは、私が予想をはるかに上回る、すごい質問を投げかけてきた。

「何名様ですか?」

…最悪だ。
あまりにもカチンときたので、「1000円で何名まで入れますか?」と嫌みのひとつでも言ってやりたかったが、そのバイトが「研修中」の名札を付けていたので勘弁してあげた。"そんなこと聞くなモード"全開で「1名です」と答えたので、それがそのバイトに、ちゃんした形で伝わっているといいのだけど。


1985年、6600mのアンデス山脈シウラ・グランデ峰に、前人未踏の挑戦しようとしている2人の英国人青年が居た。彼らの名前は、ジョーとサイモン。山を登り始めて3日目、2人は幾多の困難を乗り越え、ついに世界で初めての登頂に成功した。しかし下山の途中で足場が崩れたジョーは、数十メートル滑落し、足を骨折してしまう。
体感温度マイナス60℃の雪山での骨折。それは、"死"を意味する。絶望的な状況の中、それでも何とか2人揃って生還したいと思ったサイモンは、互いの身体をザイルで結んで雪山からの脱出を試みるのだが、途中でバランスを崩したジョーの身体は、垂直に切り立った氷壁で宙吊りになってしまった。自力でザイルを登る力を失っていたジョーに、サイモンはなす術もなく、ジョーを支えるサイモンもまた、力の限界を超えていた。
「このままでは2人とも死んでしまう」
そう考えたサイモンは、ジョーと自分を結んだザイルをナイフで切断する。その瞬間、宙吊りになっていたジョーの身体は急降下し、はるか下方のクレバスの中へと落ちて行った。


監督、カメラマンなどのスタッフはドキュメンタリーをメインに活動している人たちで、この作品は様々な映画賞のドキュメンタリー部門で受賞をしている。しかし、これは『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』というノンフィクション小説の映画化で、いわゆる"普通の"ドキュメンタリー映画ではない。『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』の筆者は、ジョー・シンプソン。つまり、雪山で骨折した上、クレバスの中へ転落した筆者が、奇跡の脱出を遂げる過程を描いた作品で、ジョーとサイモン、それぞれ本人の証言を挟みながら、役者が演じる再現VTRを流すという、「インタビュー+ドラマ」の半ドキュメンタリーのような構成になっている。まるで、テレビ番組の『奇跡体験!アンビリバボー』のような…と言った方が分かりやすいかもしれない。

雪山での登山、そして下山というシチュエーションなので、ドラマの部分にはほとんどセリフがない。それを、実際にそれを体験した本人たちが、画をバックにしてその時の心境を語っているので、映像のマジックと真実の証言が見事に融合し、これ以上ないようなリアリティが生まれてくる。この作品は、トム・クルーズ主演でハリウッドで映画化されるという話もあったそうだが、もしも本当にそうなっていたら、ここまでリアリティのあるドラマは誕生しなかっただろう。

「生還不可能な場所からの奇跡の脱出」と言えば、先日『フライト・オブ・フェニックス』を観たばかりだ。その感想で、私はこう書いた。

この映画のテーマは、局限下に置かれた人間たちが、何もしないままに"助け"か"死"を待つのが嫌で、僅かでも脱出出来る可能性を見付けることで、生きる希望を繋いで行く…というところにあるのだと思う。
しかし、発想があまりにもハリウッド的過ぎて、そのテーマはぼやけてしまっている。


超フィクション映画である『フライト・オブ・フェニックス』で、私が一番不満に感じられた部分を『運命を分けたザイル』では克明に描いていた。人間とは何てたくましい生き物なんだろうと、感心せざるを得なかった。

"自分が生きるために"ザイルを切断したサイモンには、色々な方面から非難が相次いだという。ジョーは「サイモンにザイルを切断されたからこそ、生き延びられた」ということを多くの人に知ってもらうために『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』を書いた。『運命を分けたザイル』という日本での映画タイトルには賛否両論あるようだが、「切られたからこそ生きられた。切られなかったら死んでいた」という
ジョーの視点での意味合いで付けられたもので、私はいいタイトルだと思う。

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監督 ケヴィン・マクドナルド 主演 ジョー・シンプソン 2003年 イギリス映画 107分 ドキュメンタリー 採点★★ いや、いい映画なんだと思いますよ。どーやって撮ったんだと驚くようなショット満載だし。でも、観る前の予想とあまりにもかけ離れすぎてて、結局気持ちの整理が...
31. 運命を分けたザイル(Touching The Void)  [ Subterranean サブタレイニアン ]   2006年02月08日 15:10
監督 ケヴィン・マクドナルド 主演 ジョー・シンプソン 2003年 イギリス映画 107分 ドキュメンタリー 採点★★ いや、いい映画なんだと思いますよ。どーやって撮ったんだと驚くようなショット満載だし。でも、観る前の予想とあまりにもかけ離れすぎてて、結局気持ちの整理が...
32. 運命を分けたザイル  [ Aのムビりまっ!!!(映画って最高☆) ]   2006年05月10日 19:08
    評価:★8点(満点10点) 監督:ケヴィン・マクドナルド 主演:ジョー・シンプソン サイモン・イェーツ ブレンダン・マッキー 2003年 107min 1985年、若き登山家ジョーとサイモンは、標高6600mというアンデス 山脈シウラ・グランデ峰...

この記事へのコメント

1. Posted by カヌ    2005年04月07日 01:07
TOHOシネマズ岐阜手強いですね(^^;
私も1人で行くけど、あまり気にしてないのではっきり憶えてないのですが、1人分のお金出した時は「お一人様でよろしいですか?」とはよく聞かれる気がします。これなら気にならないですよね。
2. Posted by yyz88    2005年04月07日 10:46
TBありがとうございました

撮影の素晴らしさもありましたが、極限状態の人間の心理がよく出ていたという感じがします。あんな状況に身を置きたくはありませんが^^;
3. Posted by moco fleeks    2005年04月07日 23:44
>カヌさま
人によって受け取り方は色々なので、応対する方も難しいとは思うのですが、
「1名様ですね」と念押しされるのなら、さほど気にならないはずです。
ただ、今回のはちょっとねぇ…。
研修中のバイト君が、立派に仕事をこなせるように成長してくれるのを祈っています。

>yyz88さま
こちらこそ、ありがとうございました。
凍傷にかかった顔の皮膚状態とか、すごくリアルでしたよね。
撮影班もさすがドキュメンタリーチームという感じで、作りものを観ている気がしませんでした。
4. Posted by gantakurin    2005年04月09日 10:20
gantakurin@「シネまだん」です。
TBありがとうございました!
>「何名様ですか?」
いや〜、おもしろいですね。
ワタシも一人で観に行くことが多いですが、
あまり気にしたことはなかったです。
邦題は、実はイマイチと思っていたのですが、
moco fleeksさんの解釈に大納得しました。
5. Posted by moco fleeks    2005年04月09日 11:15
gantakurinさま

こちらこそ、ありがとうございました。
TOHOシネマズはパソコンで座席が予約出来るので、
不快な思いをするのが嫌なら、そうすればいいのですが、
この先のバイトくんの成長も気になるし、いいネタにもなるので、
しばらくはこのままチケットカウンターで購入しようと思っています。

邦題は、宣伝効果のために大きく意味を外れたものが付けられることがありますが、
この映画に関しては解釈次第でOKだと思いました。
6. Posted by しっぷろっく    2005年04月10日 10:50
こんにちは

映画の内容もさることながら、moco fleeksさんのしっかりした感想表現に感心しました。邦題の考え方にも「なるほどね!」でした。
7. Posted by moco fleeks    2005年04月10日 22:08
>しっぷろっくさま

こんにちは。
まだまだ拙い表現者ですが、よろしくお願いします。
しっぷろっくさんは、山に登られる方なんですよね。
そういう方から見ても、この映画は凄かったんですね。
8. Posted by bright_moon    2005年04月11日 11:19
TBありがとうございました。
トム・クルーズで映画化の話があったんですかー?
実現しなくてよかった・・
物語仕立てにしてしまうと、やはり現実味は薄れますよね!
9. Posted by moco fleeks    2005年04月12日 00:45
>bright_moonさま

こちらこそありがとうございました。
トム・クルーズで映画化の話があったということは、公式サイトに書いてありました。
既に私の頭の中では、トム・クルーズが雪山を登っているシーンが浮かんでいますが…(笑)
超ハリウッド映画的になってしまいそうですよね。
10. Posted by マダム・クニコ    2005年04月12日 23:57
あなたの、タイトルについての考え方、大賛成です。

全ての映画はドキュメンタリーである、とゴダールは
言っていますが・・・。

TBありがとうございます。
こちらのもよろしく。
11. Posted by moco fleeks    2005年04月13日 01:35
>マダム・クニコさま

こちらこそ、ありがとうございます。
「全ての映画はドキュメンタリーである」
…深いですね。作り手の気持ちが伝わってきます。
12. Posted by アプリコ    2005年04月15日 17:29
はじめまして♪
遅くなりましたけれど、TBありがとうございました。
福岡では単館系の劇場であっているので、
すぐ終わるかと思って慌てて観たのですが、
いまだにロングランで上映中で、
人気のほどがうかがえます。
13. Posted by moco fleeks    2005年04月16日 09:02
>アプリコさま

はじめまして。
こちらこそ、ありがとうございました。
実は私もすぐに終わってしまうだろうという読みで、
公開3日めに駆け付けたのですが、こちらでも公開3週目に突入しています。
シネコンでの上映なので、この扱いの大きさにちょっと驚いています。
普段映画を観ない人も観に来ているのかもしれませんね。
14. Posted by あっしゅ    2006年05月11日 19:22
TBRありがとうございました。この映画は本当に良かったです。成功者の語りでどんどん進んでいきますが、その時の心境を詳しく説明してくれるので本当に臨場感たっぷりで良かったです。男同士の絆、友情を垣間見たような気がします。また遊びに来ます。よろしくお願いします。
15. Posted by 桂木ユミ    2006年05月14日 14:35
>あっしゅさま
こんにちは。
この映画を観たのは、もう1年以上前になってしまうのですが、リアリティのあるドラマを見せてくれました。生き残ったジョーが体験を語る…という時点で、ジョーが助かることは分かってしまうのですが、あまりのリアリティにドキドキしながら観た記憶があります。

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【2006年8月】
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美しい人★★★
僕の、世界の中心は、君だ。★★★
花田少年史★★★
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夢駆ける馬ドリーマー★★★
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Vフォー・ヴェンデッタ★★★★
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【2006年4月】
陽気なギャングが地球を回す★★
明日の記憶★★★
ニュー・ワールド★★
ホテル・ルワンダ★★★★
ブロークバック・マウンテン★★★
ファイヤーウォール★★★

【2006年3月】
白バラの祈り★★★★
南極物語★★★
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!★★★★
子ぎつねヘレン★★★
シリアナ
クラッシュ(2回目)★★★★★
イノセント・ボイス-12歳の戦場-
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ウォーク・ザ・ライン/君につづく道★★★

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クラッシュ★★★★★
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ジャーヘッド★★★★
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男たちの大和/YAMATO
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アメノナカノ青空★★★
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ロード・オブ・ウォー★★★
歓びを歌にのせて★★★
スタンドアップ★★★★★
プライドと偏見★★
キング・コング★★
THE 有頂天ホテル★★★★
SAYURI★★★
ディック&ジェーン 復讐は最高!★★★
チキン・リトル★★★


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