2005年04月09日

出会うべくして出会った男女のお話◆『エターナル・サンシャイン』(2回目)5

4月9日(土)TOHOシネマズ木曽川にて

初日に観て「大好きな映画」の1本になり、絶対にもう一度は観に行きたいと思っていた『エターナル・サンシャイン』を、ようやくもう一度観に来ることが出来た。

二度目なので、完全ネタバレで思いつくままに。


時間軸が激しく交差し、現実と想像の世界が入り乱れた作品なだけに、一度観ただけではちゃんと理解しきれていない部分もあったが、もう一度観てみることで、それらも完全に理解することが出来た。それと同時に、この作品の脚本がいかに完璧なものであるかが良く分かった。アカデミー賞の最優秀脚本賞受賞も、大いに納得出来る。

この物語の中で記憶を消されたジョエル、クレメンタイン、メアリーの3人は全て、消された記憶の中で愛した人と同じ人に再び惹かれた。例え記憶を消されても、消された記憶の上に第三者が割り込んできたとしても、過去に愛した人にもう一度出会えば、やっぱりその人に惹かれてしまう。男が女に、そして女が男に惹かれる理由というのは、理屈ではないのだと思う。

記憶消去の作業中にクレメンタインに恋をしてしまった、ラクーナ社のパトリックは、彼女の恋愛の思い出の品を使い、彼女の愛した男性をコピーしようとする。クレメンタインの恋愛のアイテムから、彼女が恋人に「タンジェリン」と呼ばれていたことを知り、なぜ彼女がそう呼ばれていたかは知らないまま、そう呼んでみる。しかしそれは、彼女がジョエルと過ごした日々の中で染めた髪の色のことだったのだ。パトリックと出会った時のクレメンタインの髪の色はブルーに変わっていて、彼が自分のことを「タンジェリン」と呼ぶ理由にはならない。意味なく自分のことを「タンジェリン」と呼ぶオトコ。あるいは、知るはずもない過去の自分の髪の色を知っているオトコ。考えただけでも気味が悪い。

その直後、パトリックに自分の好み通りのプレゼントを差し出されるが、その時もクレメンタインは素直に喜ばなかった。付き合い始めたばかりのオトコに、自分の中身を見透かされた不信感の方が強かったのだろう。パトリックが、いくらクレメンタインの恋愛の記憶の断片を盗んでも、その背景にある歴史までは盗むことは出来ないのだ。

最初に観た時には、私もクレメンタインの衝動的な部分が気になり、彼女が怒って部屋を飛び出し、ジョエルとの記憶を消しに行ったのも、一時的にヒステリックになった感情が引き起こしたものだと思っていた。しかし、もう一度観て、それは間違いであることに気が付いた。彼女の帰宅が遅いことに腹を立てたジョエルは、彼女に向かって「お前は誰とでもファックする」と言ったのだ。もしそれが事実でなければ、それは女として最低の屈辱を受けたことになる。もし私がクレメンタインの立場でも、やはり怒って部屋を飛び出し、きっと二度と彼の元へは戻らない。

ヒビの入ったグラスが二度と元の形には戻らないように、一度亀裂の入った関係は、どう頑張っても"まっさら"な状態に戻すことは出来ない。しかし、ジョエルとクレメンタインは、記憶を消したことで"まっさら"な状態に戻った。しかも、彼らはこれから恋が始まろうとする時に、自分の欠点を相手に指摘されたテープを聞かされる。それはこれからの二人に対して、大きな意味を持つ。乱雑に扱えばすぐに傷ついてしまうグラスでも、丁寧に扱えば傷つくことはないのだ。彼らは、自分のどんな言動が相手を傷つけるのか、また、どんな言動が誤解を招くのかを理解し、自分自身を見つめ直した上で、新しい恋を始めようとしている。もう一度最初から始まったジョエルとクレメンタインの恋は、同じ過ちを繰り返すことはないだろう。

「モントークで会いましょう」
これは、ジョエルの記憶の中のクレメンタインが、最後に言った言葉だった。そして目覚めたジョエルは、衝動的に通勤電車と反対のモーントーク行きの電車に飛び乗ってしまい、そこでクレメンタインと、もう一度出会う。記憶を消された、たった数時間後に。1度目に観た時は泣かなかったけれど、今回は泣いてしまった。

やっぱり、この映画大好き。もう一回観に行きたい。


1度目に観た時の感想はこちら

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誰かを愛し、たとえ傷ついても、その瞬間を生きた証が、「記憶」という人生なのだろう
2. 逆回転の恋は,何故か切ない  [ soramove ]   2005年04月12日 07:52
「エターナル・サンシャイン」★★★★ジム・キャリー、ケイト・ウインスレット主演 髪が緑だったり、ピンクの ケイト・ウインスレット、 饒舌でないジム・キャリー。 もう何か面白いことが 起こりそうな予感。 こういう静かな興奮は、良い映画の条件のひとつ...
3. 『エターナル・サンシャイン』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2005年04月12日 08:30
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この記事へのコメント

1. Posted by エンタメ!ご無礼くん    2005年04月12日 03:43
TBサンクス!です。

恋愛して傷ついた記憶と共に生きていくのも、
ツライけれど、受け入れられる。
誰かと運命的に出会い、愛し、
傷つく過程が恋愛ってもんなんでしょうね。

最近観た『アダプテーション』も
脚本の完成度に驚かされました。

ではまた!
2. Posted by chishi    2005年04月12日 12:27
ジョエルがモントーク行きに衝動的に飛び乗ったように
クレメンタインもその場所に居たという事は
彼女もまた、ジョエルとは違う方法で記憶の消去に抵抗したんじゃないかと思わせてくれて
とても羨ましくなったです。

こうやって
お互いが陥っていた誤りが訂正出来るなら
記憶を消すのもいいかなぁ(笑)
3. Posted by moco fleeks    2005年04月13日 01:32
>エンタメ!ご無礼くんさま

こちらこそ、ありがとうございます。
実は『アダプテーション』はまだ観ていないのです…。
どこかに録画してあったはずなので、探してみます。

>chishiさま

クレメンタインも記憶を消したあと「訳もわからなく不安になる」と言っていましたもんね。
運命の人かぁ。いいなぁ…。
4. Posted by ノリコフ    2005年11月23日 04:52
TBありがとうございます。
こちらのBlogはしばしば拝見させていただいていただけに、非常に嬉しく思いました。

クレメンタインが記憶を消そうとしたきっかけ、確かに2年もつきあっていた人にそう言われたら失望を感じますね。

わたしもいま好きな人がいるのですが、どうしても気持ちが届かない辛さに、その人の記憶を消したい気持ちにかられるのです…。
しかし消したところでやっぱり好きになっていそうな気もいたしますね。
本当、理屈じゃないんですよね…傍目からは「釣り合わない、やめとけばいい」と思われても。
5. Posted by 桂木ユミ    2005年11月24日 09:24
>ノリコフさま
こんにちは。
時々読んで下さっていたのですね。ありがとうございます。

人を好きになるって、理屈では片付けられないですし、理性でも抑えられるものではないですよね。記憶を消しても同じ人に惹かれる…というのは、この映画を観てとても共感できた部分でした。

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