2005年05月07日

サッカーがつないだ親子の絆◆『ベルンの奇蹟』4

05-05-11_00-51.jpg5月7日(土)TOHOシネマズ岐阜にて

ドイツの歴史の中で、2つの偉大な出来事がある。ひとつは1989年ベルリンの壁の崩壊。もうひとつは、1954年7月4日、サッカーWカップでのドイツの勝利だ。それは、敗戦国の人々に勇気を与えてくれ、"ベルンの奇蹟"として神話となっている。その頃のドイツは国際的に孤立し、国民は貧困を余儀なくされていた。そんな中、貧しいながらも幸せに暮らしていた母子の元へ、戦死したと思われていた父親が11年ぶりに帰ってきた。


以前、誘拐された息子が9年ぶりに家に帰ってきたことにより、喜びの反面、戸惑いを隠せない家族の姿を描いた『ディープ・エンド・オブ・オーシャン』という映画を観たが、この『ベルンの奇蹟』でも、厳格な父親の帰宅に家族たちはみな一様に戸惑う。
ある日突然、生活の中に入ってきたと思ったら、「ここの家で暮らす限りは、私のルールに従え」と言い、子供たちの自由を奪い始める父親。その強引さは、まるで昭和一桁生まれの私の父親そっくりで、子供たちがそれに反感を持つ気持ちが、私には痛いくらいによく分かった。

しかしその反面、父親のつらい気持ちもきちんと描かれている。せっかく戦争から生きて帰って来ても、この父親は決して英雄ではなく、むしろ、ただの負け犬のようだった。彼がソ連の捕虜となった11年の間に、どんな経験をしてきたのか。それを決して押し付けにならないように、さりげないエピソードに絡めて語っている。私には自由を奪われ、父親に反感を持つ子供たちの気持ちは分かっても、この父親の本当の苦しみはどれだけ頑張っても分かってあげることは出来ないだろう。しかも、11年かかってやっとの思いで戻ってきた我が家には、見たこともない11歳の少年が居て、自分の息子だと言っている。妻には「あなたが帰ってから子供たちが暗い」と言われる。これも相当な戸惑いだったに違いない。この作品では、そんな双方の戸惑いを両側から捕らえていて、戦争が引き裂いた家族の絆に、何とも言えないやるせなさを感じさせる。

この物語の舞台は西ドイツ。1954年、西ドイツがサッカーWカップで奇跡的な勝利を遂げる…という"ベルンの奇蹟"と呼ばれている実話が背景になっているのだが、戦争に負け、世界から孤立していたこの国の姿と、負け犬のように帰ってきて、家族から孤立する父親の姿を対比して表現し、それらが"サッカー"を通じて変化して行く様を描いた作品だ。父親の気持ちの変化があまりにも急過ぎた感はあるが、すれ違うばかりだった父親と息子の心が通じ合うシーンは感動的だった。

スポーツとは人々に無限の贈り物を与えてくれる素晴らしいものなんだな、としみじみと感じさせてくれた作品だった。ラストではかなり泣いた。

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「ベルンの奇蹟」★★★★★(DVD) 2003年ドイツ 監督
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この記事へのコメント

1. Posted by カヌ    2005年05月29日 22:31
こんばんは。
全体的に出来すぎな感はあるのですが、個人的にはツボの作品でした。意外と厳しい意見も多いようだったので、こちらで好評価だったのは嬉しいです。
2. Posted by moco fleeks    2005年05月31日 11:40
>カヌさま
こんにちは。
私はこの映画、かなり泣けました。
泣けるということは、それだけ映画の世界にハマれたということで、
当然のごとく高評価になります。
私も他の方のものを読んでみたら、皆さん評価が低いのが意外でした。

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