2005年06月01日
男性にとって女性とは何なのか?◆『オール・アバウト・マイ・マザー』
38歳の移植コーディネーター、マヌエラ(セシリア・ロス)は、女手ひとつで育ててきた息子エステバンとマドリードで暮らしていた。しかし、エステバンは17歳の誕生日に、マヌエラの目の前で車にはねられて死んでしまう。エステバンが肌身離さず持っていたノートの最後には「父親に会いたい」と書かれていた。マヌエラは息子の死と、彼の最期の想いを伝えるため、17年前に別れたきりになっていた彼の父親に会いにバルセロナへと旅立つ。
私がこの作品を理解しきれなかったのは、私が母親になったことがないからだろうか。TIME誌は「この映画を観て何とも感じない人は、心臓専門医に診てもらうことをお薦めする」と書いたらしい。各方面からこの映画で描かれている女性の生き方は絶賛され、2000年度のアカデミー賞外国語作品賞も受賞した。何も感じなかったわけではない。でも、私にはとても難しい映画だった。この映画がなぜそこまで絶賛されたのだろう。
例えば、私自身が溺愛している誰かを事故で失ったとしたら、私はその事故を引き起こした「何か」をものすごく恨むと思う。それを「何か」のせいにして悲しみを怒りに変え、怒りをぶつける対象を持つことで自分自身の精神を保とうとするに違いない。しかし、この作品の主人公の女性・マヌエラは全てを許し、悲しみを自分の中で消化してしまっている。彼女はあまりにもたくまし過ぎる。たくまし過ぎて、彼女についていけない。
そして、この作品に出てくるもうひとりの女性、シスター・ロサ(ペネロペ・クルス)もまた、自分に与えられた過酷な運命を、誰のせいにするでもなく静かに受け入れる。マヌエラもシスター・ロサも、まるで聖母のようだった。この作品では"女性"という生き物を偶像視し、美化し過ぎている印象を受けた。まるで、男性であるペドロ・アルモドバル監督が描く女性の理想像を見せつけられたようだった。
女は自己を犠牲にしてまでも子供を産み、育てていかなければいけない生き物なのだろうか。この映画では、女が全ての苦しみを引き受け、決して相手の男を責めようとはしない。女はそこまで寛容で強いものなのだろうか。この映画が、男性の手によって女性が都合良く描かれているように感じたのは私だけなのだろうか。
映画の宣伝用のチラシには「女であるために 女を演じる すべての女性たちへ」と書かれているが、こんなふうにリスペクトされても私は困る。女である前に、私はひとりの人間なのだ。無条件で聖母にはなれるほど、人間は出来ていない。
…それとも、一度心臓専門医に診てもらった方がいい?
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
1. オール・アバウト・マイ・マザー [ 雨の日の日曜日は・・・ ] 2005年06月04日 07:24
名匠と言われている(私は知らなかった)、ペドロ・アルモドバル監督作品で、 カンヌ
2. オール・アバウト・マイ・マザー [ ブログーッ( ^ー゜)b ] 2005年06月04日 11:58
おーる・あばうと・まい・まざー出演: セシリア・ロス, その他
監督: ペドロ・アルモドバル
評価: ☆☆
複雑ですね、男女の関係が。男なのか女なのか。男として愛したのか女として愛したのか。あんま関係ないのか。
3. オール・アバウト・マイ・マザー [ カフェビショップ ] 2005年11月06日 07:40
オール・アバウト・マイ・マザー 起承転結でいう起の部分は上手いね。 開始からの30分は良く出来てる。 がっとハートを鷲掴み。 中盤は少々中だるみで後半は展開を急ぎ過ぎな印象をうけた。 後半は会話のシーンが適当というか、台詞のやりとりが機械的に見えたな。 も...
この記事へのコメント
1. Posted by
晴薫
2005年06月04日 07:39
おやようございます。
TB、ありがとうございました。
今日は日本VSバーレーン戦を見るために早起きしております。
この映画、私もまさに貴ブログの記事どおりの感想です。
私は男なので心臓外科医に見てもらう必要はなさそうですけどね。
このアルモドバル監督は「死ぬまでにしたい10のこと」の製作にも関係してますよね。
こっちはとても理解しやすい映画でした。
TB、ありがとうございました。
今日は日本VSバーレーン戦を見るために早起きしております。
この映画、私もまさに貴ブログの記事どおりの感想です。
私は男なので心臓外科医に見てもらう必要はなさそうですけどね。
このアルモドバル監督は「死ぬまでにしたい10のこと」の製作にも関係してますよね。
こっちはとても理解しやすい映画でした。
2. Posted by
moco fleeks
2005年06月04日 09:41
>晴薫さま
おはようございます。
バーレーン戦、日本は勝ったようですね。
良かったです!
このレビューは『バッド・エデュケーション』を観たことに関して、
2000年5月に書いたものを転記したものなので、
映画自体にはそれほど印象深いものはなかったのですが、
自分が書いたものを読んで「あー、確かそういう映画だったな」と改めて思い出してみました。
『死ぬまでにしたい10のこと』は私も分かりやすい映画だったと思います。
『トーク・トゥ・ハー』(これは好きでした)もそうですが、
常に彼の作品には「死」や「死に近いもの」が纏わっています。
観点を変えてみれば、もうすこし理解出来るのかしら…。
おはようございます。
バーレーン戦、日本は勝ったようですね。
良かったです!
このレビューは『バッド・エデュケーション』を観たことに関して、
2000年5月に書いたものを転記したものなので、
映画自体にはそれほど印象深いものはなかったのですが、
自分が書いたものを読んで「あー、確かそういう映画だったな」と改めて思い出してみました。
『死ぬまでにしたい10のこと』は私も分かりやすい映画だったと思います。
『トーク・トゥ・ハー』(これは好きでした)もそうですが、
常に彼の作品には「死」や「死に近いもの」が纏わっています。
観点を変えてみれば、もうすこし理解出来るのかしら…。






