2005年06月02日
イタリアだからこそ成り立つ映画◆『ニュー・シネマ・パラダイス』
6月2日(木)TOHOシネマズ木曽川にてTOHOシネマズ木曽川の1周年記念上映会。5月30日の『ウォーターボーイズ』に引き続き、観に来た。前にも書いたが、この企画では、一般は入場料金が一律1000円。TOHOシネマズのシネマイレージの会員は500円で観ることが出来、おまけに鑑賞ポイントも付くし、シネマイレージの加算もしてくれる。とてもいい企画だと思うのに、宣伝が行き届いていないのだろう。劇場の近所に住んでいる友人に『ウォーターボーイズ』を観に行った話をしたら、「500円なら私も観たかったけど、そんな企画は知らなかった」と悔やんでいた。『ウォーターボーイズ』は観客がたったの4人で、完全に企画倒れかとも思ったが、『ニュー・シネマ・パラダイス』は20人くらい入っていた。
このBlogの私のプロフィール欄の「好きな映画」に挙げているほど、私はこの映画が好きだ。以前の日記に書いたことがあるが、ちょうどこの映画が公開された1990年頃には、私は劇場で映画を1本も観ていなかったので、私が最初にこの映画を観たのはNHKの教育テレビで時々やっていた、名作映画劇場での放映だったと記憶している。この映画の素晴らしさは、一度観ただけで私の心の中に深く刻み込まれ、たまたま録画していたその映画のビデオテープは、私の宝物になった。それから、行ける範囲の映画館でリバイバル上映があると聞く度に、私は劇場に足を運んで、この大好きな映画を、大スクリーンで観た。もちろん、DVDが観られる環境になり、ソフトが発売されればすぐに購入したし、約1時間のシーンが追加されている、3時間の完全オリジナル版のDVDも持っている。
1980年代のローマ、夜遅く帰宅したサルヴァトーレは故郷のシチリアにいる母親からの伝言を聞いた。
「アルフレードが死んだ」
その名前を聞いた時、サルヴァトーレの脳裏には懐かしいシチリアでの少年時代の記憶がよみがえった。30年前、当時"トト"と呼ばれていた幼いサルヴァトーレを夢中にさせていたものは、映画だった。トトは毎日のように映画館に通い、隙があれば映写室に入り込んでいた。その映写室にいた映写技師がアルフレードだったのだ。ある日、映画を上映中フィルムに火が付き、映画館は全焼してしまう。それが原因で失明したアルフレードに代わり、再建された劇場でトトは映写技師を任される。やがて時が経ち青年へと成長したトトは、自分で8ミリ映画の撮影をすることに夢中になる。アルフレードはそんなトトの才能を見抜き、シチリアを出て大きな町で勉強することを勧める。
何度も観ている映画なので、今、初見の気持ちになって、この映画の感想を書くのは難しい。私はもう、オープニングでテーマソングが流れてくるだけで、既に涙ぐんでしまっているような状態なのだ。年老いた映写技師と少年の友情が素晴らしいとか、ラストシーンでは涙が止まらなかったとか、誰でも書きそうな、ありふれた感想を今更書いてみても仕方ない。なので、今回はちょっと違う視点で書いてみようと思う。
(以下、この映画を未見の方にはさっぱり分からない文章になりますが、ご容赦下さい)
以前、この映画が大嫌いだという人が書いたレビューを読んだことがある。その人の言い分は確かこんな感じだった。
「いくら検閲でひっかかってカットしたといえ、フィルムは借り物であって映写技師のものではない。上映が終わったら、それを元に戻して、映画会社に返却しなければいけないのが義務である。だから、そのルールを無視して感動にすり替えようとしたこの映画が、私は大嫌いだ」
それを読んだ時、私は「なるほど」と思った。この映画が嫌いな人には、ちゃんとした嫌いな理由があり、それはそれなりに説得力のあるものだった。でも、私は観ていてそれに気付かなかった。映画なんて、細かく見ていけば穴だらけだが、それに気付かずに楽しめればOKなのだし、穴を知ってしまっても、それを許せればOKなのだ。だから、私はこの人のレビューを読んでも、やっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』が大好きなことには何も変わらなかった。
しかし今日、もう一度この映画を観てみて、私はあることに気が付いた。カットしたフィルムに関しては、映写室の中でアルフレードとトトの間で、ちゃんとセリフが交わされているのだ。
カットされたフィルムを手にしたトトが、「このフィルム、もらっていい?」と聞くと、アルフレードは「だめだ!上映した後に、元に戻さなきゃならないんだ」と言う。すると、トトは映写室の片隅に山積みになっているカットされたフィルムを見つけ、「じゃあ、なぜこれは元に戻さなかったの?」と聞く。するとアルフレードはこう答える。
「戻す位置が分からなくなったんだよ。どうせキスシーンだ」
これは、きっちりとした仕事を求められる日本ではあり得ない話だ。でも、細かいことにこだわらない、アバウトな仕事のイタリア人の気質ならあり得る。この映画はイタリアでなければ作れない。舞台がイタリアだからこそ、成り立つ映画だったのだ。
ちなみに、この映画の3時間の完全オリジナル版では、2時間版では「謎」になっていた部分が色々と明らかになる。それにより、同じであるはずのラストシーンの意味合いが大きく変わり、ある意味では、2時間版と3時間版は「同じであるようで、全く違う映画」という考え方も出来る。なぜなら、2時間版ではサルヴァトーレはアルフレードを懐かしむだけだが、3時間版ではサルヴァトーレはアルフレードを「許す」のだ。2時間版は3時間版を短縮しただけの作品にはとどまらない。どちらもそれぞれに素晴らしい作品となっている。
3時間版を未見の方はぜひ、こちらも観てみて下さい。

ニュー・シネマ・パラダイス

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版
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1. 『ニュー・シネマ・パラダイス』愛とは映画とは楽園とは [ *モナミ* ] 2005年06月05日 15:36
『ニュー・シネマ・パラダイス』裏切られた映画のひとつです。映画が一番の娯楽だった頃。イタリア・シチリアの小さな村の人々も、村で唯一の映画館「パラダイス」での映画上映を楽しみにしていた。満員の映画館で、みんなで笑い、泣き、歌い、フィルムの中の出来事に、一...
2. ニュー・シネマ・パラダイス [ せるぐとぅや ] 2005年06月05日 22:09
あるふれーどっ!!
トラックバックありがとうございました。
ボクは通常版のほうが好きです。
3. ニュー・シネマ・パラダイス [ 愛すべき映画たち ] 2005年06月06日 14:53
NUOVO CINEMA PARADISO(1989/伊=仏)【監督】ジュゼッペ・トルナトーレ【出演】フィリップ・ノワレ/ジャック・ペラン/サルヴァトーレ・カシオ 数ある大好きな映画の中、1本挙げろと言われれば迷うことなくこれを挙げるんじゃないかと思います。それくらい、何度となく繰
4. ニュー・シネマ・パラダイス [ まるっと映画話 ] 2005年06月07日 15:18
NUOVO CINEMA PARADISO '89年 フィリップ・ノワレ 泣かせ映画があまり好きではない私ですが、目幅涙で泣きじゃくる大好きな作品です。 124分の公開版と、175分の完全版がありますが、どちらも何回か見ています。 シチリアの小さな村に生まれた主人公と、 友達のアルフ
5. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版 [ befounddead ] 2005年06月08日 02:05
NUOVO CINEMA PARADISO
(1989年イタリア/フランス)
2004/11/11@早稲田松竹
というわけで観てきました。ニューシネ完全版。
「混んだら観ない」と決めていたので、「混むなよ混むなよ」と朝からはらはらしておりました(今週の早稲田松竹は割と観客の入りがよさそう
6. ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [ Do you know? ] 2005年06月10日 11:55
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フィリップ・ノワレ、サルヴァトーレ・カシオ、ジャック・ペラン、ブリジット・フォッセーほか
今日紹介する作品は、映画という媒体を軸にひとりの男性の人生を描いた映画「ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版」です。
7. ニュー・シネマ・パラダイス [ MOONの似顔絵エッセイ ] 2005年07月14日 22:48
イタリア映画に「ニュー・シネマ・パラダイス」という名作がある。
「映画館」が主な舞台となっている映画、という点で非常にめずらしい。
バックに流れるテーマ音楽と共に、忘れられない映画となっている。
「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画は映写室での
シーンが
8. ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [ しーの映画たわごと ] 2005年08月24日 15:18
ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版
しー 評価 81点
評判のいい映画なので借りてみました。
完全版と劇場版があるようで、完全版はあまり評判が良くないようです。
・・・でも、カット無しの完全版がもともとなんだろうから、これはこれで満足なん
9. ニュー・シネマ・パラダイス [ おすすめ本と最新映画情報【書評と映画レビュー】 本検索、本通販、映画館、読書感想文、評論、批評 ] 2005年12月30日 11:03
10. 第62回.アカデミー賞『ドライビング・ミス・デイジー』(1989) [ 【Fantastic Cinema】 アカデミー賞 - 受賞作品カタログ ] 2005年12月31日 19:19
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作品賞:ドライビング・ミス・デイジー 『ブルース・ベレスフォード監督』 人種への偏見が根強いアメリカ南部の町。老いてもなお、威厳だけは失わない未亡人・デイジーに、黒人の専属運転手・ホークは従順に仕えていた。主従関係にありながらも、固いきずなで結ばれ...
12. NUOVO CINEMA PARADISO (ニュー・シネマ・パラダイス) [ OOH LA LA - my favorite songs ] 2006年01月04日 09:54
ニュー・シネマ・パラダイスフィリップ・ノワレ ジュゼッペ・トルナトーレ 角川エンタテインメント 2000-08-11
■伊・仏 1989年製作
■監督 Giuseppe Tornatore(ジュゼッペ・トルナトーレ)
13. 映画鑑賞記「ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo cinema Paradiso)」 [ けちけちオヤジのお気楽ダイアリーズ ] 2006年01月04日 21:51
鑑賞日:06.01.01 観賞場所:シネ・スイッチ銀座
1989年に公開された伝説の傑作がデジタル・リマスター版として蘇り、期間限定で再上映された。
映画って本当に素晴らしい!(公式HP)
<ストーリー>(公式HPより抜粋)なぞるとよく読めます
中年の映画監...
14. ニュー・シネマ・パラダイス(デジタルリマスター版) [ カリスマ映画論 ] 2006年01月08日 15:17
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15. ニュー・シネマ・パラダイス/完全オリジナル版(DVD) [ ひるめし。 ] 2006年03月02日 20:24
映画から夢が広がった 大切なぼくの宝物
CAST:フィリップ・ノワレ/ジャック・ペラン/アニェーゼ・ナーノ 他
■イタリア/フランス産 175分
ミニシアター系の興行収入成績歴代1位らしい。(間違ってたらごめんなさい。うるおぼえなんで)
去年の年末にも上映してたらみた...
この記事へのコメント
1. Posted by
kouhei
2005年06月07日 00:29
はじめまして。TBありがとうございました。
ボクもこの映画は大好きです。劇場で観たことがないので3時間版しか知らないのですが…。
でもトトがアルフレードを「許し」てこそ、あのラストシーンがいいんじゃないかと思うのであんまり2時間版を観る気もしないのですが、機会があったらぜひ劇場で観てみたいです。
「イタリアだからこそ成り立つ」という深い感想、なるほどと思いました。好きな映画を繰り返し観ると、そのつど新しい発見があっていいものですよね。
長々と失礼しました。また機会があればお邪魔します!
ボクもこの映画は大好きです。劇場で観たことがないので3時間版しか知らないのですが…。
でもトトがアルフレードを「許し」てこそ、あのラストシーンがいいんじゃないかと思うのであんまり2時間版を観る気もしないのですが、機会があったらぜひ劇場で観てみたいです。
「イタリアだからこそ成り立つ」という深い感想、なるほどと思いました。好きな映画を繰り返し観ると、そのつど新しい発見があっていいものですよね。
長々と失礼しました。また機会があればお邪魔します!
2. Posted by
moco fleeks
2005年06月07日 02:50
>kouheiさま
はじめまして。
この映画、2時間版は大人になった彼女に再会しないまま、
サルヴァトーレはローマに帰ります。
だから、あの日彼女が来なかった理由も知らないままで、
ラストシーンであのフィルムを観るのです。
大人になった彼女に会った方が良かったのか、
会わなかった方が良かったのかというところが、
どちらが好きかという意見が分かれるところでしょう。
先に3時間版を観てしまうと、2時間版では物足りないかもしれませんね。
はじめまして。
この映画、2時間版は大人になった彼女に再会しないまま、
サルヴァトーレはローマに帰ります。
だから、あの日彼女が来なかった理由も知らないままで、
ラストシーンであのフィルムを観るのです。
大人になった彼女に会った方が良かったのか、
会わなかった方が良かったのかというところが、
どちらが好きかという意見が分かれるところでしょう。
先に3時間版を観てしまうと、2時間版では物足りないかもしれませんね。
3. Posted by
奈緒子と次郎
2005年06月07日 15:34
TBありがとうございます♪
どちらかといえば私は2時間版の方が好きです。
3時間版は、恋愛映画の要素が強くなってきますよね。
それにしてもTOHOシネマズ木曽川の企画すごいですね!
レンタルビデオとそう変わらない金額でスクリーンで見られるなんて、
うらやまし〜い!!!
どちらかといえば私は2時間版の方が好きです。
3時間版は、恋愛映画の要素が強くなってきますよね。
それにしてもTOHOシネマズ木曽川の企画すごいですね!
レンタルビデオとそう変わらない金額でスクリーンで見られるなんて、
うらやまし〜い!!!
4. Posted by
moco fleeks
2005年06月07日 19:49
>奈緒子と次郎さま
私もビデオで観ていた頃は2時間版派だったのですが、
以前一度3時間版をスクリーンで観る機会があり、
それからは、どちらも好きになりました。
感動の度合いを変えてしまう、大スクリーンのチカラの凄さを感じました。
TOHOシネマズ木曽川の支配人は、きっと映画を愛している方なんだと思っています。
映画ファンの気持ちを良く分かっていなければ、
なかなかここまでやってくれませんよね。
私もビデオで観ていた頃は2時間版派だったのですが、
以前一度3時間版をスクリーンで観る機会があり、
それからは、どちらも好きになりました。
感動の度合いを変えてしまう、大スクリーンのチカラの凄さを感じました。
TOHOシネマズ木曽川の支配人は、きっと映画を愛している方なんだと思っています。
映画ファンの気持ちを良く分かっていなければ、
なかなかここまでやってくれませんよね。






