2005年07月12日
一足の靴に込めた純粋な兄妹の気持ち◆『運動靴と赤い金魚』
9歳の少年アリ(ミル=ファロク・ハシェミアン)は、修理してもらったばかりの妹ザーラ(バハレ・セッデキ)の靴を、買い物の途中で失ってしまう。 アリの家庭は貧しく、家賃も滞納しているような状態。 両親に靴のことを言い出せないアリは、ザーラに自分の運動靴を交代で履こうと提案する。 両親にも先生にも内緒で、一足の靴を交代して履いて学校に行くアリとザーラ。 そんなある時、アリは学校で小学生のマラソン大会の選手を募集していることと、3等の商品が運動靴であることを知る。 アリはザーラに新しい靴をあげるため、マラソン大会に出場する決意をした。
『ライフ・イズ・ビューティフル』 『セントラル・ステーション』などと並び、 99年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたイラン映画。 この作品は、もともと海外に出すことを意識して作られたかのようにとても分かりやすく、ユニークにイランの文化を紹介し、且つ、子供の心を上手く表現した素晴らしい作品になっていた。 幼い頃から家の仕事を手伝うことを当たり前とされ、封建的な家庭に育ったアリとザーラ。 子供たちにとって父親はとても威厳があり、恐怖の対象でもある。
言えば、厳しく叱られることが分かりきっているから、買い物の途中で靴を失ったなどとは、アリは口が裂けても言えないのだ。 親に言えない、子供だけの秘密を持った時のドキドキ感は、 自分の子供時代にも共通するものがあり、懐かしい気持ちにもさせてくれる。
自分が履いている靴が気に入らないために、校庭で他人の靴ばかりが気になってしまうザーラの気持ちの表現も秀逸 。そんな子供のほんの些細な心の動きを、見事に表現した作品だった。 スネたり、文句を言ったりしながらも妹を想う兄の姿と、兄を信頼する妹の姿がとても微笑ましく、 子供だけの世界を覗き見ている楽しさがある。
絶対的な威厳を誇っていたはずの父親が、アリを連れて街の高級住宅地に出掛け、 そこでアリに情けない姿さらすことになる、という展開も ストーリーにちょうどいいスパイスを与えているだけではなく、 ラストへの伏線として、上手く生かされていた。 毎日毎日学校への道のりを全速力で走っているからこそ、持久力が付き、足も速くなるアリ。だからこそマラソンに強くなる…というところも、実に説得力がある。
色んな伏線がラストに向かって集約されている、実に上手い脚本だったが、それだけではなく、 この作品の一番の見所は、やはり心優しい兄妹の『一足の靴』に対する純粋な想いだろう。 ラストの金魚のシーンは、『癒し』という言葉がぴったりくる。 心が温かくなるような作品だった。
(1999年9月、劇場にて鑑賞)
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
ゆめひもstyleのシネマコラムは、映像翻訳の勉強をしている友人が毎月更新してくれているものです。
ちなみに私の愛車は白いmoco。
時々遊びに来てくださいね。
この作品を観て、自分の子どもの頃を思い出しました。
コメントくれた人から教えていただいたのですが、学校の英語の教科書に、このお話が載っているそうですね。
イランの映画は初めてだったこともあって、とても印象に残っています。子どもって、本当に大変なことを親や大人に言えないんですよね。せ、せつない。
内容はもちろん、映像が本当にきれいで大好きな映画のうちのひとつです。
これからもよろしくおねがいいたします。
これ見ました。
すごく良かったのですが、すっかり記憶から落ちていて急に思い出しました。
不思議なものですね・・・。
この映画大好きです。先日「マラソン」
を観たばかりで、それもかなり良かったんですが、
ふとこの作品の事を思い出しました。
映画としてはやっぱりこの作品の方が好きです。
あくまで「子供の目線」なのがいいですよね!
靴をなくす事が彼らにはとても重大な悲しい事件だった
というのが悲しくて、そしてほほえましいと思います。
一等賞でもうれしくないって表情、演技が
なんともいえず、好きです。
また遊びに寄らせていただきます。
私も心優しくなるこの映画の大好きです。
こういう映画を見ると、何かほっとしますね。
私も最近映画を見る機会が増えてきたので
いろいろと参考にさせていただきたいと
思います。
また寄らせていただきます。
最近、劇場・DVDで映画を観る事がマイ・ブームとなっていますが、感じた事をうまく言葉に表現できず苦しんでます(笑)。作品選びもかなりミーハーな偏りがありますが、映画って楽しいですね。最近、知りました・・・。
お父さんの素直にアリに感謝の言葉を述べるところもイイですね。
こんにちは。
モコタンは乗りやすくて気に入っています。
走り屋の私としては、もう少しパワーがあるといいんですけどねー。笑。
今、イタリアですか?
私も以前カプリ島まで行きましたが、高波で青の洞窟には入れませんでした。
羨ましいです。
また遊びに行きますね。
こんにちは。
子供の頃の「秘密」ってドキドキして楽しいものでしたよね。
>コメントくれた人から教えていただいたのですが、
>学校の英語の教科書に、このお話が載っているそうですね
この話は知りませんでした。
いいお話ですものね。選んだ人はセンスがあると思います。
こんにちは。
私も子供の視線になって、ヒヤヒヤドキドキしながら観ていました。
生活は違えど、子供のやることはどこの国でも同じなんですよね。
こんにちは。
ホント、映像も綺麗な素敵な映画でした。
これからもよろしくお願いします。
こんにちは。
いつも読んで下さってありがとうございます。
私も最近新作のレビューを書けない代わりに、
過去に書いたものを掘り返して転載しています。
自分で読み返しながら、もう一度観てみたい気持ちになりました。
こんにちは。
実は『マラソン』つながりで、この作品のレビューを載せてみようと思ったのでした。
この映画も、いつまでも心に残るいい作品でした。
こんにちは。
彼は3等にならなきゃいけなかったんですからね。
あのシーンは、私も好きです。
また遊びに来て下さいね。
こんにちは。
>こういう映画を見ると、何かほっとしますね。
私もそうです。
こういう映画がたくさん公開されるといいですね。
こんにちは。
私のサイトが映画選びの参考になれば幸いです。
また遊びに来て下さいね。
こんにちは。
映画は楽しいですよ。
私もハマりまくってます。
1本でも多くの「いい作品」を観たいですね。
>お父さんの素直にアリに感謝の言葉を述べるところもイイですね。
みなさんのコメントを読みながら、色んなシーンが思い出されてきました。
私もあのシーン、大好きです!
私のブログは映画の事しか書いてないんですが、肝心な内容は上手に書けない、知識不足でとばしていることが多いのでとても感謝しております。また何かあれば良かったらお願いします。いい作品があれば教えて下さいね。ぜひ拝見します。
この度はTBありがとうございました。
もう忘れてしまったドキドキ感がほんのちょっとだけよみがえる、
不思議な雰囲気がありますよね。
私もとっても好きな作品です。
またあちこち覗かせていただこうと思いますので、
よろしくおねがいします。
ところで昨晩からあれこれTBを試みているのですが、
まったくできないようで・・・(涙)。
もし不審なTBがいくつもあったら、
私かもしれませんので削除してください。
申し訳ありませんでした。
こんにちは。
いい映画に出会えることは「喜び」なので、それを多くの人に伝えたいという気持ちで書いています。
いい作品はどんどんと紹介していきますので、また遊びに来て下さい。
こんにちは。
このlivedoor blogは、TBで時々エラーを起すようなのです。
ごめんなさいね。
(スパムでない)誤爆TBはそれほど気にしませんので、どうぞお気になさらないように。
かなりボリュームがあるBlogですが、よろしかったら色々覗いてみてやって下さい。
こちらもお返しさせていただきました。
凄く兄妹愛が、そしていい意味で生活感が伝わってくる映画だと思います。
主演の男の子は監督が映画の世界と同様の貧民街から見つけ出したらしいですが、この映画がきっかけでこの映画とは違う靴なんて簡単に買える生活になったのでしょうね(笑)
こんにちは。
「その瞬間」でないと作ることが出来ない映画はあるのでしょうね。
レビューもアップしましたが、この監督の『太陽は、ぼくの瞳』もいい作品でしたよ。
お兄ちゃんも妹もお父さんもいいですね〜
必死でマラソン大会を走る姿は、ほんとマラソン大会を無視してますよね。
可笑しくて可笑しくて。
ラストは一瞬、え、何等になったの??3等?なんて思ったりもしたんですが、まさか1等とはーーー
しゅん・・として帰る兄に、嬉しそうに運動靴を買って帰る父・・すごくいいですよねー。
欲をいえば、兄のあのあと喜ぶ顔を見たかったです〜
こんにちは。
いろんな人の気持ちを上手く表した、いい映画だったと思います。
こういう映画は最近観ていない気がするので、また観てみたいです。
こんにちは。
こちらこそありがとうございます。
色々感想を書いていますので、よろしければまた遊びに来て下さい。
挨拶が遅くなり、すみませんでした。
映画はあまり観ないのですが、この映画は大好きです。
観ていてすごく温かい気持ちになりました。
またお邪魔させていただきますねー!
こんにちは。
こういう系の映画は最近観ていないので、また観たくなりました。丁寧に作ってあって、素敵な気持ちにさせてくれますよね。
また遊びに来て下さい。
こんにちは。
私がこの映画を観たのはもう6年も前ですが、まだ心の中に残っている作品です。優しい作品でした。






