2005年07月17日
スンシンの視点で観た場合◆『フライ,ダディ,フライ』 (2回目)
2回目なので、ネタバレで書きます。未鑑賞の方は、こちらをどうぞ。 ↓
期待を裏切らない面白い作品◆『フライ,ダディ,フライ』
いつも拝読させて頂いている『まつさんの映画伝道師』のまつさんは、この映画を「復讐劇だ」と書いていた。なるほど、さすがまつさん。実は私も2度目にこの作品観た時、「復讐劇だな」と思って観ていた。でも、まつさんの意見とはちょっと着眼点が違った。私は「スンシンの復讐劇」だと思ったのだ。
子供の頃、リストラされてとち狂ったサラリーマンにいきなり刃物で刺され、血まみれになって家の中に逃げ込んだスンシン。そのことをきっかけに、「そんな奴らに負けないように」と身体を鍛え始める。そして腕っ節には十分に自信がついたある日、刃物を持ったサラリーマン・鈴木さんが学校に現れる。もちろん、スンシンは蹴り一発で鈴木さんから刃物を奪い、拳一発でノックアウトする。スンシンは、鈴木さんを倒したことで、子供の頃に自分を刺したサラリーマンへの「復讐」を果たしたのだ。
しかし、鈴木さんにはスンシンを刺したサラリーマンとは違い、ちゃんとした理由があった。自分と同じ年頃の娘を傷つけられた相手が許せないと言う。しかも、その娘を傷つけた相手というのは、相当なワルだということをスンシンとゾンビーズは知っていた。そこで鈴木さんが本気なら、スンシンとゾンビーズはそれをバックアップしてやろうとするのだ。
それも彼らは最初は本気ではないではなく、ただの退屈しのぎに過ぎなかった。スンシンも「3日もったら誉めてやるよ」と言い、2日めは「おい、あのおっさん来たぞ」と言う。スンシンにとっても、最初はただの「おっさんイジメ」だったのだ。ゾンビーズもどういう理由でリタイアするのか賭けては楽しんでいたが、彼らは鈴木さんの「本気」を知ったとたんに真剣な応援モードへと変わって行き、やがては彼らの間に友情が芽生えてくる…という話だ。
在日朝鮮人のスンシンは、「今の世の中」は昔よりは暮らし難いものではないだろう。しかし父親はおらず、母親は夜の仕事(水商売ではなく工場勤務か何かかな、と思った)に出ている。帰って来たときに、真っ暗な部屋の中に向かって「ただいま〜。おかえり〜」と独り言を言うのは、本当は迎えてくれる人が欲しい証拠だ。しかし、母親はスンシンを愛していていないわけではなく、食卓の上には、「温めて食べて下さい」と書かれたメモと共に、心のこもった食事が用意されている。夜、働きに行かなければ生活できない、在日朝鮮人の現状なのだろう。鈴木さんはスンシンに「メシでもご馳走するよ」と言うが、スンシンは「メシは家で食え」と言ってその誘いを断る。例え冷えていても、スンシンは母親が心をこめて作った料理を自宅で食べたいのだ。
『燃えよドラゴン』に関しては、実は観たことがないので、細かいネタまでは分からなかったが、ドラゴンフリークの人には、たまらないネタも満載だとか。それが分からなかったのが、ちょっと残念だったりする。 ラスト、鈴木さんとスンシンが一緒に走っている姿は、師弟でもなく、友人でもなく、親子に見えた。スンシンも、鈴木さんに自分の理想の父親の姿を見付けたのかもしれない。
私は小説本を読んでいないので、あくまで「映画を観ただけの印象」でスンシンを語ってみた。いかがだったでしょう?
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この記事へのコメント
だが、クライマックスの対決に至り、やはり師スンシンと、弟子鈴木の関係は保たれた。
ただ、クライマックスで鈴木に飛びつくスンシンに、一瞬、父と子の姿がだぶり、ラストで「飛べ、おっさん」と言った時、スンシンも飛びたかったのではないかと、つまり一緒に飛びたかったのかと思った。
飛びたいという願望の現われである鷹の舞と、実際に飛んだ鈴木さん。この差は大きい。
あるいは、あの後、スンシンのドラマがスタートするのかもしれない。
鈴木さんを一撃で倒してしまった時点で、もう成就したのですよね?
俺ももう一度見なければ!
『燃えよドラゴン』はぜひ観てください!
いろんな映画でオマージュされてると思いますし・・・
これは原作も読んだんですが、映画ではよりスンシンの心理に迫ってる気がしました。
お母さんの設定とか刺された設定とか、家の中のシーンとかは、全部映画オリジナルだったはずです。
スンシン側の視点も見せることで、父の姿を鈴木氏に重ねるスンシンと、
彼を守ってやりたい、強くなりたいと願う鈴木氏との関係が
より深く描かれていた気がしました。
木の上で二人で話すシーンはなんか泣けてきました。
(セットはちょっとちゃちかったけど・・)
長々すみません。「燃えよドラゴン」は私も観たいなあ。
ではでは。
師弟で友人で、そして父子。
スンシンが長らく失っていた父性に触れるシーンに、
何故だか胸がほっこりします。
映画とは全く関係ありませんが、
私も3年ほど前、突発性難聴に罹りました。
あれは身体的な辛さに加え、
このまま聴こえなくなるかも!?
という恐怖のダブルでキツイですよね。
誰か自分を守ってくれる人が欲しかったんだろうな。
映画版は小説とはだいぶ違うみたいですね。
映像でしか表現できないものとか、
スンシンの心境とか。
まだ見に行っていないので早く見たいです。
自分もトラックバックさせていただきます。
ユミさんのスンシン視点、なるほどな〜と思いました。
スンシンの心にはじめて入ってきた人、おっちゃん。
その嬉しさを言葉に表現できないまま、靴を履くスンシン。
2人の気持ちが伝わってるのが何とも良かったです。
スンシンと状況は違うけど、「誰もいない暗い部屋に帰って
いる子供」は多いと思う。
幼い頃の、居て欲しいと思う時にいない孤独感って、ずっと心に
残るだろうな。
ユミさんの記事、興味深く読ませていただきました。
映画版と小説版は違う部分もあるけれど、どちらもそれぞれに相応しい面白さをそなえていたと思います。
先日出た3作目の「SPEED」を読んだのですが、
スンシンのイメージがわたしの中ではすっかり岡田くんになっちゃってました。
スンシンが履いたあのスニーカー、イケテルのかどうかは分かりませんが、とっても嬉しかったんでしょうね。
私も「ただいま〜、おかえり〜」のシーン、とても心に残っています。
ああいう言葉が出てくるスンシンは道を間違えることはないんじゃないかなぁ。
こんにちは。
素晴らしいコメントをありがとうございます。
>飛びたいという願望の現われである鷹の舞と、実際に飛んだ鈴木さん。
>この差は大きい。
このコメントに感動しました。
スンシンも鈴木さんに確実に「何か」を教えてもらったのでしょう。
スンシンは「自分のため」に戦ったけれど、鈴木さんは「娘のために」戦った。
「自分ではない誰か」のために戦うことが出来ることの素晴らしさかな。
そこで初めて本当に飛べることに気付いたのかもしれませんね。
こんにちは。
もう一回観ると、確実に観方が変わりますよ。
最初に鈴木さんをノックアウトした時のスンシンの目が印象的でした。
この作品は早くもDVD購入決定なので、いずれは『燃えよドラゴン』を観てから、
もう一度観直してみようと思っています。
こんにちは。
…ということは、小説本はほとんど鈴木さんの視点だったということですね。
金城さんは、スンシン役が岡田くんに決まって、かなり脚本を書き直したと言っていたので、
やはりW主演を強調したかったのでしょう。
(…というよりJの力でそうせざるを得なかった?)
小説版もぜひ読んでみなければ。
こんにちは。
r_m_mさんも「とつなん組」なんですね。
私もちょっと耳に違和感を覚えただけで「え?もしや、また?」と、ドキドキします。
ちょっと前なんて、シャワー中にまた完全に聞こえなくなって、めちゃくちゃ焦りましたよ。
でも、ホントに耳に水が入っただけだったんですけどね…。
「とつなん」に限らず、病気というのは全て精神的にも負担になりますね。
健康はありがたいことです。
こんにちは。
きっと今まで「自分を守ってくれる存在」なんて信じていなかったんでしょうね。
でも、鈴木さんとの出会いで「自分を抱きしめてくれる存在=精神的に守ってくれる存在」
に気付いたのは大きいことでしょう。
こんにちは。
>映画版は小説とはだいぶ違うみたいですね。
他の方の話を聞いていると、やはりそのようですね。
ぜひぜひ映画版を観に行って下さい。
こんにちは。
私もあの靴のシーン好きです。
「俺はスニーカーしか履かねぇんだよ」とポイって捨てちゃうくせに、
次のシーンではちゃんと鈴木さんが買ってくれたスニーカーを履いてる。
素直じゃないなぁ、スンシン…と思いながらも、あの年頃の男の子は、
自分の父親に対してもそういう態度なんだろうな、と思いました。
スンシンが母親のメモをクチャって丸めるシーンは切なさが伝わってきましたね。
こんにちは。
私も8月は読書月間にしようと考えています。
今、読み残している本を全部制覇したら、金城さんの作品に挑戦する予定です。
こんにちは。
>私も「ただいま〜、おかえり〜」のシーン、とても心に残っています。
さりげないシーンでしたが、あれは印象的でしたよね。
そして、まっすぐに犬のところに行って、パンを分け食べているところも。
淋しく留守番をしているあの犬も、スンシンの姿を反映しているように思いました。
犬の名前が「アチョー」だったのには笑いましたが。
スンシンにとっての復讐劇ですか。なるほどなぁと思いました。
私の場合、漫画>映画と来ましたから、小説はこれからです。
映画は、スンシンの描写が漫画以上に詳細で、心の動きもよく出ていたと思います。
小説も漫画も、金城さんが書いたゾンビーズの話は「FLY,DADDY,FLY」は2作目で、このシリーズの前に、「レボリューションNo.3」と言う第1弾があります。
私は、漫画の連載でこちらも読んでいますが、スンシンのことをよく知るには、レボリューションNo.3も併せて読まれると良いかと思います。(お時間があればですが)
他の方もコメントされているようですが、最近ゾンビーズシリーズ第3作も出たようです。
読んでみようかなと思ってます。
さすが二回目!深い話になってますね。僕もスンシンの帰宅後の「おかえり〜。ただいま〜」ですごく切なくなりました。ほかのブログでは突っ込むところが多すぎて良くないようなことを良く見ますが、そこをひっくるめても良い映画だと思います。
嬉しかったので、私も初めてTBに挑戦してみました(^^ゞ
2回目とあって、細かい部分も落とさずご覧になってますね。
舜臣の復讐劇…言われて私もなるほどと思いました。
表面的なストーリーはシンプルだけれど、案外深い映画ですよね。
犬の名前は『アチョー』だったのは気づかなかったなあ。(笑)
ところで、ユミさんはどうも私と同い年のようですね。
より一層、ユミさんのことが近く感じられて、嬉しいです(^^)
決闘場面の鈴木さんの仕草は「燃えよドラゴン」そのもの。私なんかリアルタイムではまった世代なので、にやりとしました。
ただ、「灰とダイヤモンド」は私映画館で寝てしまったほうなので、あの詩の意味がいまひとつ分かりませんでした。原作本には載っているのかな。
「灰とダイヤモンド」では主人公は「敗れて死んでしまう」のですが、それとこの映画とどう重なるんだろう。気になります。
こんにちは。
まず最初に『レボリューションNo.3』ですね。
分かりました。
色々読まなきゃいけない本(『ミリオンダラー・ベイビー』とか
『四日間の奇蹟』とか)を読み終わったら、
早速読んでみたいと思います。
しかし、映画を観る度に本も増えるばっかりで…困りますね。苦笑。
こんにちは。
どんな映画だって、細かく観れば突っ込みどころ満載ですよ。
私はこの映画に思いきり楽しませてもらえたからオッケーでしたよ。
原作の金城さんも、「この映画はファンタジーだ」とおっしゃっていましたしね。
こんにちは。
流衣さんもぜひもう一度観てみて下さい。
エサのパンをあげるシーンで、「こら、待て、アチョー!」とスンシンが言っていました。
流衣さんも同い年ですか。
最近そういうコメントも多くて、私も嬉しいです。
思いきって年齢公表してよかったと思っています。
こんにちは。
私は『灰とダイヤモンド』は観ていないのですが、
鈴木さんもなんか哲学的なセリフをブツブツと言っていましたね。
機会があったら私も『灰とダイヤモンド』も観ないといけませんね。
今回はマイブログの紹介までしていただき感謝感激です。
「瞬臣による復讐劇」という解釈、その通りだと思います。ただ、原作と映画では「ゾンビーズ」の描き方がかなり違うので(映画ではシリーズ物という前提になっていない)彼らの優しさが十分に伝わっていない分、「瞬臣による復讐」というニュアンスがかなり感じられるのではないでしょうか?
それ以上に青春映画というよりも「家族を愛するおっさんの映画」になった点が原作とかなり異なる気がします。
かといって映画が面白くないのではなく、独立した作品としてかなりよかったと思いました。
こんにちは。
いつも鋭い着眼点に「なるほど〜」と、感心させられながら読ませて頂いています。
原作ファンの皆さんのお話を聞く度に、本を読んでみたい気持ちが増幅してきます。
これからもよろしくお願いします。
スンシンの復讐劇ですか、なるほどぉ。私はどちらかというとハジメおっさんの父親復権、青春カムバックムービーって感じで捉えてましたが、スンシン目線で見るとまた違った角度の物語がみえてきそうですね。
先日、原作の小説を少し立ち読みしましたけど、かなり面白そうでした。後日談になるのでしょうかゾンビーズシリーズの「SPEED」も冒頭スンシンが倒されたとこから始まってかなり面白そうでした。まだ買ってないんですけどぜひ読破したいです。
こんにちは。
2度観ると、1度目とは違ったところが見えてきて、また面白いですよ。
『SPEED』もよさそうですね。
聞けば聞くほど、読みたい気持ちが募ってきます。
私も8月には頑張って色んな本を読みたいと思っています。
自信のブログ自体、至極個人的感想のため
ここでは映画の内容についてのコメントは差し控えますが、
原作を読むとより面白そうなことだけは確かのようですね。
さっそく本屋に行ってみたいと思います。
一応TBお返しさせていただきました。
こんにちは。
10人居れば、10通りの感想があっていいと思います。
私もmaquitさんのブログを読みながら、
「私はこう思いました」という気持ちでTBさせて頂きました。
とりあえず、小説本を読んでみなければいけませんね。
私もトライするつもりです。
本作で、在日ゆえの悲しみに目を向ける観客は、私の周辺には少ないのですが、ユミさんはきちんと捉えていらっしゃる。うれしいことです。
こんにちは。
ありがとうございます。
包丁を持って学校内に入ってきた鈴木さんをノックアウトした時の、
鈴木さんを見下ろす、スンシンの姿が忘れられません。
まさにスンシンの努力が叶った瞬間だったのだと思います。
先日DVDで観ました。
確かにスンシンについて多くは語られてないませんが、包丁の一件や1人の食卓などから察せられるその胸中はとても興味深いですね。
それを踏まえて観ると、彼の発する言葉は重みを増します。
「本当の勇気を感じたなら、闘わなくてもこっちの勝ちなんだ」
こんにちは。
私も2度観て、違う視点で楽しむことが出来ました。鑑賞してからもうずいぶんたちますが、ぜひもう1度観てみたい作品です。
「本当の勇気を感じたなら、闘わなくてもこっちの勝ちなんだ」
胸に響く、いい言葉でしたね。







