2005年10月04日

面白いが、世界のキタノには到底及ばない◆『七人の弔』3

681a8c07.jpg10月3日(月) シネマスコーレにて

あるサマーキャンプに7組の親子が参加した。しかし、それは普通のサマーキャンプではなかった。その親たちは皆、普段から子供たちを虐待していて、子供の存在が疎ましかったのだ。それは、人知れず山奥で子供たちを臓器移植のために売り飛ばすためのツアーだった。過酷なツアーを体験させ、「健康」が証明された子供1人当たりを5000万円で買ってくれるという。何も知らずに親と一緒にツアーに参加した子供たちだったが、キャンプが進むにつれ「何かがおかしい」と感じ始める。そして、親たちの企みを知ってしまった子供たちは…。



北野武の弟子、ダンカンが監督・脚本を手掛けた作品。タイトルの『七人の弔(とむらい)』は、もちろん黒沢明監督の『七人の侍』をもじったものだ。ダンカンは1998年に公開された、ロカルノ国際映画祭でキュメニカル(全キリスト協会)賞を受賞した『生きない』でも、脚本を担当している。これも黒沢明監督の『生きる』をパロったタイトルをつけ、シニカルな笑いを取っていた。今回の『七人の弔』は、あらかじめ簡単なプロットを聞き、面白そうで観に来たのだが、そのチラシには「この夏いちばんのファミリー映画」などと書いてある。北野武から受け継がれたブラックユーモアはたっぷりだ。ダンカンは脚本としては2度目だが、監督としては初めての映画参加。北野武の弟子だけあって、撮影手法は彼のものとよく似ている。しかし、やはり初監督作品ということもあり、北野作品の手法とよく似ているだけに粗も目立つ。真似だけでは「世界のキタノ」には到底及ばないな、と感じた。

残念なことに、観ている最中で私はこの映画のオチが分かってしまった。チラシには「明るいサスペンス」と書いてあったが、その答えを導き出すヒントがセリフや行動の随所に盛り込まれているのだ。ブラックなユーモアや、欲に駆られた人間の醜さが映し出されていて面白いところもあったのだが、思った通りの展開になってしまったことが、サスペンス映画としては失敗している。


途中でオチが分かってしまった以上、ネタバレなしでは書けないので、ここから先はネタバレで。



オチに気づくための、第一のヒント。
親がカラオケに興じている間、子供たちが相談していたときのセリフ。
「生き延びるためには垣内(ダンカン)を丸め込もう」

そして、第ニのヒント。
指導員・垣内自身が、昔、親に虐待を受けていた傷を負っていたことを、子供たちに暴露するシーン。

いくら臓器売買という商売に手を染めているといえ、子供を虐待する親のことを、垣内が「良い目」で見るはずはない。そして、同じ傷を持つ子供たちに同情する気持ちが全くないとは言い切れないと思った。ここで、垣内と子供が手を結ぶのが分かってしまうのだ。

垣内がもっと悪人なら、親も子も眠らせて全員の臓器を売り、報奨金を支払わない…という手もあるかと考えたが、全てを知ったはずの子供たちがあまりにも素直に「最後の晩餐」に臨んだので、きっとこれは子供たちを助けて、親の方を眠らせるのだな、と分かった。


「子供の虐待」という、現代の問題点を巧みに使った面白い脚本だと思ったが、あと一歩足らない…というところ。サスペンスなら、途中でオチがバレちゃいけないでしょう。ダンカン自身が監督をせず、サスペンスを見せるのが得意な監督が作っていたら、最後に「やられた」と思ったかもしれない。それでも、ストーリーとしては面白かったので、大甘で★3つ。

ちなみに、この映画人気なしなのか劇場はガラガラ。チラシの裏面には、オダギリジョーもコメントを寄せているというのに。

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この記事へのコメント

1. Posted by づみハハ    2005年10月05日 09:59
TBをありがとうございました。
劇場ガラガラだったのですか?
私が見たときは、レディスデイということもあったのか満席でしたのに。
これからもよろしく♪
2. Posted by sabu    2005年10月05日 11:35
3 TBありがとうございました。
ミステリーが苦手な方で、かつ勘も悪い方なので、他の人よりオチに気づくのが遅くて、けっこう楽しめてしまいました。
残念だったのは、七組も親子が登場するので、各親子のエピソードが薄くて、おまけに7つ描くから話がややぶつ切れに感じられたこと。
ブラックユーモアたっぷりなのはもちろん楽しめました。
ダンカン監督、これからどんどん映画撮って欲しいです。
3. Posted by めっち    2005年10月05日 15:18
4 トラックバックありがとうございました。公開後すぐに観に行ったのに新宿の劇場はガラガラでした。


ネタバレっぽいこと書きます。
僕もオチを最後まで気付けなかったクチですが、もしかしてタイトルが物凄いネタバレなのでは、と後で思いました。哀悼の意を示すこととは意味が違ってしまうかも知れませんが、大人の数と子供の数が違うので…。ダンカンがそこまで考えて作ったかはわかりませんが(^^;

4. Posted by juneberry    2005年10月05日 17:37
TBありがとうございました。
僕も途中でオチがわかってしまったクチです。7人っていったい誰なんだろうと最初から一生懸命考えて(数えて?)いました。

もっともこの映画はオチはそんなに問題じゃないような気もしました。どっちに転んでもハッピーエンドじゃないですからね。

「最後の晩餐」はもちろん聖書の話に引っかけているのでしょうね。あの舞台回しは結構面白かった。

それよりも僕の感想に書いたことだけど、ダンカンの説教臭い台詞がとても気になりました。

僕はテアトル新宿で見ましたが、結構お客さん入ってましたよ。
5. Posted by じゅん吉    2005年10月05日 21:15
TBありがとうございました。

私は、この映画に限らず、最後の最後までオチに気づかない事が多いです(^^;
監督の思うつぼのリアクションをとれていたと思います(笑)
もしかしてサクラ向き(^^?
6. Posted by 尚    2005年10月06日 00:08
TBありがとうございました^^

私の評論より読みやすく分かり易い内容で、勉強させて頂きました。

先のコメントに習わさせて頂きますと、私が行った梅田ロフトはがらがらでした^^;
7. Posted by tomy    2005年10月06日 03:36
TBありがとうございます。
同じ日に同じ劇場で見ていたってことですよね。しかもガラガラ…ひょっとしたら同じ回だったりして(笑)
僕は意外と楽しめたから良かったですよ。全く期待してなかったですからね。
8. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 07:20
>づみハハさま
こんにちは。
前売券を買っていたので、平日の昼に観て、キャパ50人ほどのミニシアターで観客3人でした。ちょっと寂しかったです。

これからもよろしくお願い致します。
9. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 07:55
>sabuさま
こんにちは。
ダンカン、監督としては粗が目立ってまだまだだな…という印象でした。でも、面白く仕上がっていたので、これからも色んなことを学んで頑張って欲しいですね。
10. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 08:10
>めっちさま
こんにちは。
やっぱりガラガラでしたか…。スター性のある人が出ていないことと、宣伝をほとんどしていないことが原因でしょうか。

ダンカンは最初に『七人の弔』というタイトルを思いつき、そのあとでストーリーを考えた…と聞きました。ダンカンらしいといえば、らしい作り方かも。
11. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 08:48
>juneberryさま
こんにちは。
この映画のテーマは、現代の問題に鋭く切り込んでいると思いました。親に虐待されている子供が親に対して考えることは結局…。力の上下関係が逆転した時点で、親は子供にヤられしまうのですよね。あれほどまでに怖いことを考えてしまう子供たちの行く末は、やはり怖いです。ブラックですね…。
12. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 08:50
>じゅん吉さま
こんにちは。

>監督の思うつぼのリアクションをとれていたと思います(笑)

そういう観方が出来る人は、映画を楽しんだ分、得をしていると思います。私のようにひねくれた映画の観方をしている者からすると、羨ましいかも。

13. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 09:07
>尚さま
こんにちは。
お誉めの言葉をありがとうございました。素直に嬉しいです。

どこも色んな人の話を聞いていると、やはり興行的には失敗のようですね。名古屋の劇場は公開期間が2週間なのに、あの集客では…
14. Posted by 桂木ユミ    2005年10月06日 09:21
>tomyさま
こんにちは。
同じ回だったかもしれませんね。ちなみに、その前の回もガラガラ。そのあとの回も、待っていた人はほとんどいませんでした。
15. Posted by やっぴー    2005年10月06日 23:53
こんにちは、TBたどってまいりました。
やはりガラガラだったのですね〜(^-^;
東京もそうでした、ちと残念です。

私はですねぇ、
最後のシーン、子供たちがバスに乗って山を下りる時
帽子を目深にかぶった運転手のニヤリとした口元が映ったら
それは×2コワイものがあると思ったんですが
そういうシーンは無く、普通に終わっちゃいましたね〜。
16. Posted by SHO    2005年10月07日 00:23
TBありがとうございます。
私もある程度オチが解った方なんですが、「・・・子供料金にしてあげる・・・」のセリフが印象に残ってるので、まぁ良しかなという感じです。
17. Posted by 桂木ユミ    2005年10月07日 08:49
>やっぴーさま
こんにちは。
私も最後にもうひとオチが欲しかったと思いました。そしたら「やられた!」と思ったかもしれません。
18. Posted by 桂木ユミ    2005年10月07日 08:51
>SHOさま
こんにちは。
子供料金と言っても、彼らはあの年齢で2500万円を手にしているのですからね。よく考えると、末恐ろしい子供たちです。
19. Posted by 健太郎    2005年11月19日 16:24
2 遅くなってしまいましたがTBありがとうございました。
師匠の北野武が大きすぎるせいか、辛口の評価になりがちですが、合格点にはなっていると思います。
僕はラストが読めなかったので意外でした。
それよりも、「子供の数が減ればそれだけ臓器適応の可能性も減るはずだ」「大人の臓器は汚れているから子供の臓器の方が価値があるはずだ」とか下らない突込みをしてしまいました。
20. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 08:57
>健ちゃん
私も、所詮ダンカンが撮った映画だな、と思って観ていました。

>「大人の臓器は汚れているから子供の臓器の方が価値があるはずだ」

まぁ、同じだけの数の臓器が手に入って半額になったわけだから、買う側としても妥協できたのかも。売る相手はじーさんだしね。それより、あの子供たちの末恐ろしさにゾッとした作品でした。
21. Posted by うしろまえ    2005年12月04日 08:50
TBありがとうございました。
遅くなってしまってすいません(>_<)
私はオチが分からなかったので意外性はありました。
ただこどもの臓器がよぼよぼのおじいちゃんに合うのだろうか?という疑問は残りましたが…。
『生きない』のような
赤いどんぶりの並ぶ閑散とした食堂とか
海辺に一列に並んで食べるお弁当とか
映像としてシュールで笑える場面が少なかったのが
残念でした。が、十分満足できました(^^)
22. Posted by 桂木ユミ    2005年12月04日 16:43
>うしろまえさま
こんにちは。

>ただこどもの臓器がよぼよぼのおじいちゃんに合うのだろうか?という疑問は残りましたが…。

「子供の臓器売買」という話は時々聞きますが、どうなんでしょうね。私はおじいちゃんを見て、あんなにヨボヨボになって、そこまでして生きたいのかなーと思いました。お金持ちの考えることは違うのでしょうかね。

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