2005年11月19日

「シビアな問題」は必要だったのか?◆『カーテンコール』3

ea3fdb56.jpg11月15日(火)TOHOシネマズ木曽川にて

香織(伊藤歩)は東京の出版社で、写真週刊誌の契約記者として働いていた。スクープ写真をモノにし、これで正社員になれると思って喜んでいたのも束の間、写真を撮られた女優が自殺未遂を起こし、それがきっかけで故郷の下関に近い福岡のタウン誌に異動を命じられる。そこで読者から届いた一通のハガキが香織の心を動かした。それは、「昭和30年代終わりから40年代中ごろまで下関の映画館にいた幕間(まくあい)芸人を探して欲しい」というものだった。香織は下関のその映画館<みなと劇場>を取材することになった。
香織は早速劇場に向かうが、当時のことをよく知っていたのは、劇場でモギリの仕事をしている絹代(藤村志保)ひとりきりだった。彼女は昭和36年<みなと劇場>にやってきた安川修平(藤井隆)の話を始める。彼は上映の幕間に物真似をみせる"幕間芸人"となって人気者になったという。しかし、取材を進めていくと、香織は思わぬところにたどり着いた。


現在、大ヒット中の『ALWAYS 三丁目の夕日』とほぼ同じ時代を描いているこの作品は、同じように懐かしい昭和の時代を楽しむ作品かと思ったら、全く違っていて、もっとシビアな問題を描いていた。予告編でも、宣伝用のチラシにも、公式サイトにもその「シビアな問題」については全く触れていないので、映画を観て初めて知らされて驚いた。最近は予告編で内容を見せさせられすぎて、映画の楽しみが半減してしまうことが多いのだが、この映画の宣伝方法こそ、映画を観る側のことを配慮している、正しい宣伝方法なのだと思う。それを『ALWAYS 三丁目の夕日』のような作品だと思って観に来て、逆に「騙された」と思ってしまう人が居ないとも限らないが…。

私は、この作品の予告編を観た時、"幕間芸人"というのは、当時の映画館のどこにでも居るものなのだと勘違いしていた。あくまでも、これは<みなと劇場>に限ったことであって、フィクションであるのだ。そこからドラマが始まっている。

『ニュー・シネマ・パラダイス』にも同じようなシーンがあったが、この『カーテンコール』でも、一時は劇場後ろの扉が閉まらないほど人が溢れていたのに、家庭にテレビが普及するにつれて観客の数は減っていく…という、悲しい現実が描かれていた。「映画は大スクリーンの映画館で」という持論を持っている映画ファンから見ると、こういうシーンは、やはり切ない。

この物語で描かれている、その「シビアな問題」については、言及するのはやめようと思う。それが一番のポイントであるのに対し、公式サイトが徹底的に隠している意図を私も理解したいと思うのだ。ただ、それがこのストーリーの中で本当に必要だったかどうかということが分からなかった。やはり「貧しい」「仕事がもらえない」ということが、「それ」と直接関係していることは確かだが、そういう表現の仕方しか、「貧しい」「仕事がもらえない」という設定にもっていけなかったのだろうか…と考えてしまったのだ。修平が愛していた娘を手放してしまう過程も理解出来なかった。観ていて、その「シビアな問題」に対しての描き方が、どうしても中途半端な感じがして仕方なかった。

この物語は、一時は一世を風靡したひとつの映画館の幕が、時代の流れとともにその姿を変えていく姿を描いていると同時に、香織の取材を通して二組の父娘の感情が変化していく物語だ。それだけで十分だった気がする。ここで描かれている「シビアな問題」は、それほど必要ではなかったと思ったのは、私だけだろうか。

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この記事へのコメント

1. Posted by MIYAUCHI    2005年11月19日 15:20
桂木さん、こんにちは。
TBありがとうございます。

ブログ、拝見させていただきまして、そういう感想をもたれるのは、ごもっともだと思います。現に私も「?」でしたから。ストーリーに無理なところは確かにあります。この映画が全国公開されていますが人気はどうなのかわかりません。
どうしても地元の映画という事で贔屓目に見てしまいます。
2. Posted by アスカ    2005年11月19日 18:35
こんにちわ。趣味のブログを開設しましたアスカです。
このブログみたいにみんなに見てもらえるようなブログを書いていきますので、よろしくお願いします。。
3. Posted by hito    2005年11月19日 18:39
ユミさんの感想の「シビアな問題」・・確かにとても微妙な問題でありますよね。きっと今も昔も私達のような“観客”がポイントでしょう。

佐々部監督は地元を愛し、映画を愛しています。その愛する二つのもの(地元から消え行く映画館)への思いをこの作品にぶつけたのではないかと思えました。

実際、下関には、今は小さな映画館しかありません。下関の文化水準がどうこうではなく、資本の大きい映画館へ人の足が流れるのです。下関は25万人前後の小さな街です。隣の北九州は100万人都市で大きなスクリーンを要する映画館がたくさんあります。必然的にそちらへ流れてしまうんです。。

現在もじわじわとさびれゆく下関の映画文化を盛り立てたいという監督の思いをかんじるのは、やはり下関を同じように愛する一人だからでしょうか?

長いコメントになってしまってごめんなさいね。

TBありがとうございました。
4. Posted by メビウス    2005年11月19日 23:16
こんばんわ♪TB有難うございました♪

不況と時代の波に翻弄された幕間芸人の人生。
幕間芸人と言う存在自体知らなかった自分にとっては結構新鮮な気持ちで観る事も出来たのは確か。
親子2組の絆も描かれてはいましたが、1組に的を絞ったほうがその分内容ももっと濃くなると思ったんですけどね・・安川さんと娘が対面するシーンも少し違和感でしたし・・・

でも韓国の運ちゃんはあんなにアットホームなんですかね〜(笑
5. Posted by らずみかん    2005年11月19日 23:21
ユミさんトラバありがとうございます♪
そうですね、一映画ファンとしてちょっと切ない映画でした。
6. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 08:45
>MIYAUCHIさま
こんにちは。
地元の映画をひいき目に観ることは、仕方ないことですよ。この映画はあまりにも色んなことを詰め込みすぎて、大切なことがボヤけてしまったことが残念でした。
7. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 08:59
>アスカさま
こんにちは。
ブログを続けるのは結構大変なことですが、頑張って下さいね。
8. Posted by Ren    2005年11月20日 09:04
TBありがとうございました☆
映画を見て、え?っと思った1人です。
藤井隆さん主演のもっと軽い感じを想像していたので、サブテーマの重さに沈没でした。
9. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 09:04
>hitoさま
こんにちは。

>実際、下関には、今は小さな映画館しかありません。

それもまた、別のシビアな問題ですね。この映画からは、ひとつの消え行く映画館から、監督の映画に対する愛情がちゃんと伝わってきました。それが、私の書いた「シビアな問題」によって薄まってしまった気がしたことが、何だか残念だったのです。
10. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 09:09
>メビウスさま
こんにちは。

>でも韓国の運ちゃんはあんなにアットホームなんですかね〜(笑

それには私は違和感を感じました。年配の人ほど、反日感情が高いですからね。観光に来た日本人に笑いかけるのは、全部商売のため。それなのに、あんなに親切にするなんて、自分がよほど日本人に親切にしてもらった経験がある人でなければ無理でしょう。私も1度韓国に旅行に行きましたから、その時の経験からそう思いました。
11. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 09:14
>らずみかんさま
こんにちは。
どういう形にせよ、思い出の映画館がなくなるのは切ないですよね。私も自分の体験と重ね合わせて何ともいえない気持ちになりました。
12. Posted by 桂木ユミ    2005年11月20日 09:21
>Renさま
こんにちは。
「シビアな問題」は配給側が徹底的に隠していましたからね。それを前面に出すと、興行的に上手くいかないと思ったからでしょうか。ただ、昭和を懐かしみたいために観に行った人は、「えっ!?」と思ったでしょうね。
13. Posted by lyu    2005年11月20日 13:44
TBありがとうございました。
私も観ているうちに、
作り手の目的が・・・って思いました。
2人の親子のお話だけでも十分でした。
14. Posted by zattchi    2005年11月20日 15:04
僕も鶴田さんの字についてのシーンが好きです
監督の体験談から幕間芸人の話を書いたとパンフにありましたけど・・・
ノスタルジックな映画としてみるとだめなんでしょうね
15. Posted by gopats    2005年11月20日 21:23
こんばんは。今回も興味深く読ませていただきました。「シビアな問題」については、今回は描かなかった方が、父と娘の話等のテーマがぼやけなくて良かったのかもしれませんね。僕が観たときの感じではあのくらいであれば、映画の「ピント」もずれなくて良かったかなと思いましたけど。もう少し踏み込んでしまうとテーマがぼやけてしまいそうですが。。
伝えたいことをいろいろあんまり詰め込みすぎると却って失敗することはあると思いますが、僕的には、この映画はぎりぎりセーフって感じでした。
僕も、鶴田真由の字のところのシーンはジーンときてしまいました。。
16. Posted by 桂木ユミ    2005年11月21日 20:37
>lyuさま
こんにちは。
全く同じ意見だったようですね。「映画館と2組の親子の話」だけで十分だったと思います。
17. Posted by 桂木ユミ    2005年11月21日 20:39
>zattchiさま
こんにちは。

>監督の体験談から幕間芸人の話を書いたとパンフにありましたけど・・・

…ということは、モデルになった人が居たということですね。そこからイメージを膨らませて、ああいう話になったのでしょうか。

18. Posted by 桂木ユミ    2005年11月21日 22:14
>gopatsさま
こんにちは。

>伝えたいことをいろいろあんまり詰め込みすぎると却って失敗することはあると思いますが、僕的には、この映画はぎりぎりセーフって感じでした。

私は物語が思ってもいない方向に向かってしまったので、意外性は買いましたが、自分の求めていたものとは違っていたことが残念でした。

>僕も、鶴田真由の字のところのシーンはジーンときてしまいました。。

あのシーンは良かったですね。ダンナさんの愛情にも感動しました。
19. Posted by ノリエモンの気持ち    2005年11月23日 10:22
こんにちわ、トラバありがとうございます。
今はおじさんですが、独身時代東山動物公園そばの下宿屋にいました。
また、「突発性難聴」もやりましたよ。
大きな病気も2回やりましたが運良く
生きています。
私の観た東京下町の映画館は、幕間芸人はいませんでした。
観る映画は自分の感性で、山田洋次監督作品が多い。
「カーテンコール」を観て、こどもの頃近くにいた在日韓国人を思い出しましたね。
20. Posted by 桂木ユミ    2005年11月24日 09:40
>ノリエモンの気持ちさま
こんにちは。
昔、ご近所さんにお住まいだったのですね。「とつなん」も経験されたということで、色々共通点が多いですね。

やはり幕間芸人というのは、この映画独特のものだったのでしょうか。その時代を知らない私には、それが普通なのかと思っていました。
21. Posted by 現象    2005年11月25日 01:30
とある映画館の盛衰と「シビアな問題」。
どちらかに絞ることなく、
双方共に中途半端になってしまったような気がしました。
宣伝のしかたに疑問が残ります。
22. Posted by 桂木ユミ    2005年11月25日 10:51
>現象さま
こんにちは。
私も映画館の盛衰と二組の父娘との話だけで十分だったと思います。「シビアな問題」を宣伝側がなぜ隠したのか。見せることによって集客が難しくなると考えたのなら、「騙された」と思っても仕方ないですよね。
23. Posted by 沢木耕三郎(仮名)    2005年11月27日 00:19
こんばんは。
>ここで描かれている「シビアな問題」は、それほど必要ではなかったと思ったのは、私だけだろうか。
僕もこの映画に「シビアな問題」は必要なかったと思う人間の一人です。「ALWAYS三丁目の夕日」のような映画だと期待して行った一人です。
けれど、たぶん、下関育ちの佐々部監督には「シビアな問題」は避けて通れなかった問題なのでしょう。
昭和30年代育ちの人間が「ALWAYS」を撮っていたら同じようにまた別の「シビアな問題」が出てきていたかもしれません。
あの頃を知っている人間が撮るか、撮らないか。それがこの2本の境目だったのかもしれません。
どちらがいいとか悪いとかではなく、そういう似て非なる2本の映画を見れたことが幸せだという気が時間のたった今はします。
結論:「シビアな問題」は必要ではない。でも、あってもいい。映画の幕間芸人のように。
24. Posted by 桂木ユミ    2005年11月27日 10:10
>沢木耕三郎(仮名)さま
こんにちは。

>けれど、たぶん、下関育ちの佐々部監督には「シビアな問題」は避けて通れなかった問題なのでしょう。

きっとそうなのでしょうね。それくらい、当時の下関では当たり前のことだったのかもしれません。

>結論:「シビアな問題」は必要ではない。でも、あってもいい。映画の幕間芸人のように。

とても上手いまとめ方だと思います。納得しました。
25. Posted by Ken    2005年11月28日 00:15
こんにちは!TBさせて頂きました。
僕もほぼ同じような感想を持ちました。
潔く、昭和の時代の幕間芸人の過去と現在の物語、という風にテーマを絞ったほうが(映画としては)締まったような気がします。
26. Posted by 桂木ユミ    2005年11月28日 09:59
>Kenさま
こんにちは。
同じ感想を持たれたようですね。私も「シビアな問題」を取り入れたことで、焦点がボケてしまったような気がします。
27. Posted by みずは    2005年12月04日 16:20
はじめまして。私も「シビアな問題」は入れなくても良かったのでは、と思っています。他にも「何故これがこうなるのか?」と思ったところがいくつかありまして、メインテーマ自体がボケてしまった作品のように思えて、勿体無く思いました…。TBさせて頂きますm(_ _)m
28. Posted by 桂木ユミ    2005年12月04日 17:15
>みずはさま
こんにちは。
TBありがとうございます。
そう、単純に映画館の衰退と親子愛だけで十分だった気がします。でも、監督はきっとその「シビアな問題」をどうしても入れたかったのでしょうね。私にとってはそれが残念でした。
29. Posted by タウム    2006年08月22日 20:16
TBさせていただきました。
実際観て、宣伝とその内容のあまりの違いに不満が多かったと聞きましたが、その通りだと思いました。

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