2006年07月17日

その生活のあとにあるもの◆『やわらかい生活』3

64ae7ec0.jpg7月7日(金)名演小劇場にて

タイトルから想像して、観終わったときに「ホッ」と心が癒されるような作品を期待していたのだけれど、実際には違っていた。

最初、独特な視点で自分の考え方を語る優子(寺島しのぶ)を、興味深く見ていた。35歳で女ひとりで生活しながらも、自分の世界を持っている彼女が魅力的に見えた。しかし、そんな優子のことがだんだん分からなくなってくる。躁鬱病の優子は、いつも本当か嘘か分からないことを、もっともらしく言う。両親を阪神大震災で亡くしたとか、友人を9.11のテロで亡くしたとか、恋人を地下鉄サリン事件で亡くしたとか、若気の至りで身体に刺青を入れたとか…。ストーリーが進むごとにそれが真実なのか嘘なのか明らかになるのだが、結局、明らかにされなかったものもあった。優子の嘘が明らかになる度、彼女の真実はどこにあるのだろうと思ってしまった。

私は、優子と同じくらいの大法螺を吹く人と付き合ったことがある。優子の嘘と同じように、彼の嘘は決して人を陥れようとするものではなかったし、その嘘によって誰かが傷つけられるということもなかった。ただ少しだけ自分のことを大げさに話して、自分を違う目で見てもらいたいという願望の現われだったのだろうか。彼が居なくなったあとで、私は様々な真実を知り、事実でないことを彼がさも本当のように話していたことに、少なからずのショックを受けた。結局、彼のどこからどこまでが真実だったのか、分からなくなってしまったのだ。だから、私はこの作品の優子の大法螺を、とても複雑な思いで見ていた。

そんな優子と、彼女のココロをやわらかく包み込む4人の男性たち(豊川悦司、松岡俊介、田口トモロヲ、妻夫木聡)の物語。仕事をせず、亡くなった親の保険金でまったりと暮らす中、次々と優子の前に男たちが現れる。最近、人と出会うことの難しさをつくづくと感じている私は、そんなことってあるのかなと思った。正直に言って優子が羨ましかった。しかし、そこには何ともいえない切ない結末が待っている。「変わらないで」と願っていても、人は変わってしまうものだし、「行かないで」と願っていても、人はいつかは立ち去ってしまう。ひとときの「やわらかい生活」のあと、優子はいったいどうなるのだろうか。親、友人、恋人を次々と失くし、躁鬱病になってしまった優子が、この出来事をバネに立ち直れるだろうか。彼女が、あの「やわらかい生活」のあとで感じるものは、とても大きな喪失感なのではないかと思うのは、私だけだろうか。

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1. 「やわらかい生活」  [ a monologue ]   2006年07月17日 20:35
■公式HP :http://www.yawarakai-seikatsu.co
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8. mini review 07040「やわらかい生活」★★★★★★★☆☆☆  [ サーカスな日々 ]   2007年04月11日 12:51
カテゴリ : ドラマ 製作年 : 2005年 製作国 : 日本 時間 : 126分 公開日 : 2006-06-10〜 監督 : 廣木隆一 出演 : 寺島しのぶ 豊川悦司 松岡俊介 田口トモロヲ 妻夫木聡 大森南朋 柄本明 肉親や恋人、友人を失い、すべてに無気力になり、東京の...

この記事へのコメント

1. Posted by 作太郎    2006年07月20日 19:29
ユミさん、こんばんは。
元気にしてますか。
信州(長野市)にもシネコンがようやくでき連日盛況です。おかげでたくさんの作品を見られるようになりました。
この作品、本当に大きな喪失感を感じる作品ですね。やわらかい時間ってこういうことなんだろうかと素直に疑問を感じました
2. Posted by しゅー    2006年07月23日 09:41
お久しぶりです.
かなり後味が重そうな映画ですね.

自分を少しでも良く見せようとすると,後で辻褄あわせが大変になる.
相手がどう思おうとかまわない,と割り切って考えられれば,そんなことは心配しないのかもしれない.でも,そう思える人間ならば,はじめから良く見せようとはあまり考えないだろう!

大なり小なり良く見せようという気持ちが働くのが普通の人ではないだろうか(・・?)
弱い自分,でもできるだけありのままの自分で人と接したいですね♪
3. Posted by 猫姫少佐現品限り    2006年08月01日 19:16
5 こんにちは!
最近いかがですか?
お元気ですか?
4. Posted by 桂木ユミ    2006年08月02日 20:21
>作太郎さま
こんにちは。亀レスごめんなさい。
シネコンはすごい勢いで増えていますね。それによって、多くの人たちが大スクリーンで映画に触れる機会が増えることは嬉しいことです。ウチの近くのシネコンも、オープン当初はガラガラだったのですが、今では結構賑わっています。

>この作品、本当に大きな喪失感を感じる作品ですね。

他の方の感想を読んでみると、前向きに受け止めている方が多かったのですが、私も作太郎さんと同じく喪失感しか残りませんでした。自分の体験とリンクしているからでしょうか。
5. Posted by 桂木ユミ    2006年08月02日 20:27
>しゅーさま
こんにちは。亀レスごめんなさい。

>かなり後味が重そうな映画ですね.

そうならないように作ってあったラストシーンだったのですが、自分を主人公の立場に置き換えてしまうと、どうしても暗い方向にしか考えられなくて。

>弱い自分,でもできるだけありのままの自分で人と接したいですね♪

本当にそう思います。でも思ってもなかなかそう出来ない自分にもどかしさを感じたりしています。

6. Posted by 桂木ユミ    2006年08月02日 20:54
>猫姫少佐現品限りさま
こんにちは。
お気遣いありがとうございます。少しずつですが、元気を取り戻しています。ブログも出来るだけ早く再開したいという気持ちになってきています。

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