映画の感想(2005年12月)

2006年01月07日

安心して観ていられるパニック映画◆『ザスーラ』4

d96cb048.jpg12月28日(水)109シネマズ名古屋にて

ある日の昼下がり。幼いダニー(ジョナ・ボボ)は、パパ(ティム・ロビンス)にも兄のウォルター(ジョシュ・ハッチャーソン)にも遊び相手になってもらえなかった。パパは姉のリサ(クリステン・スチュワート)に兄弟を託して仕事に出掛けてしまうが、リサは弟たちの面倒など全く見る気はなく、ダニーが疎ましいウォルターは、彼を地下室に閉じ込めてしまった。地下室でダニーは、「ザスーラ」と書かれたボード・ゲームを見つける。地下室を脱け出し、リビングに戻ったダニーは、箱に書かれたルールも読まずにゲームを始めてしまう。すると、宇宙船のコマはかってに動き出し、「チンッ」という音と共に1枚のカードが飛び出してきた。それには「隕石群、襲来!いますぐ、回避せよ」と書かれてあり、次の瞬間、雹(ひょう)のような物体が、そのカードを貫いた。なんと、天井を突き抜けて、隕石が降ってきたのだ。ふたりに襲いかかる、流星の嵐。そして、隕石群を逃れたふたりが玄関の扉を開けると、家は既に宇宙を漂っていた。「ザスーラ」は、カードに書かれていることが現実となる、宇宙体感ゲームだったのだ。ゴールしなければ地球に戻ることは出来ないと知り、ダニーとウォルターはゲームを続けることに…。


「あの『ジュマンジ』から10年――」と書かれているのを見て、「そうか、もう10年も経つんだ…」と思った。『ジュマンジ』では、屋根裏部屋で「ジュマンジ」を発見した幼い姉妹がゲームを開始すると、ゲーム盤に書かれていた内容が現実に起こり、象やライオンが目の前を駆け回って、家の中はジャングルと化していった。『ザスーラ』は、同じ作者の書いた、リアル体験出来るゲーム盤をめぐったもうひとつの物語。「『ジュマンジ』の宇宙版」と言ってもいいだろう。私は『ジュマンジ』を試写会で観たので、当然観たのは10年前になる。観たあとに「あー、面白かった」で終われる娯楽作なので、細かい点まで覚えてはいない。ただ、SFXを駆使し、全てCGで描かれた動物たちが暴れまわる姿は、当時としては斬新なものを感じた記憶がある。それから10年。SFXの技術も格段に進歩し、今度は宇宙を舞台にした、この『ザスーラ』が映画化されたのだ。

元々が人気作家クリス・バン・オールスバーグの絵本が原作であるということもあり、「子供向け」であることは間違いない。そのために今回の上映では、ほとんどの劇場が「日本語吹替版」を上映していて、私は「字幕版」を上映している劇場を探して、"わざわざ"そこまで出掛けた。子供向けのハリウッド映画であるから、幼い兄弟がどんなパニックに落ちようと、「きっと最後は無事に地球にたどり着けるに決まっている」という、妙な安心感を持って観ていられた。それでも、ゲームに参加する人間の数が、1人から2人へ、そして3人、4人と増えていく様は、意外性があって面白かった。

15年間、宇宙を漂っていた宇宙飛行士が、どうやってあの宇宙服を手に入れたのだろうかとか、「15年間、宇宙食しか食べていない」と言っていたが、それはどこで調達していたのだろうかとか、細かいところに突っ込みを入れたくはなったものの、大人が見ていても全く退屈はしない娯楽作品として仕上がっている。また、ゲームを通じて仲の悪かった兄弟が変化していく様子は、子供にも分かりやすいメッセージ性を感じられた。子供はきっと、ドキドキしながらパニックに立ち向かう兄弟を見るのだろう。大人が観ても、子供が観ても、それぞれに楽しめる作品だったと思う。
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2005年12月30日

失速したSABU監督の新作◆『疾走』2

da884276.jpg12月27日(火)伏見ミリオン座1にて

“沖”と“浜”という2つの地域が存在する、ある干拓地。“沖”と“浜”の人間同士には、見えない壁のようなものがあったが、“浜”に住む少年シュウジ(手越祐也)は、“沖”に住む孤独な少女エリ(韓英恵)に淡い恋心を抱く。やがて、シュウジの成績優秀な兄シュウイチは、カンニングを密告されたことで精神が乱れ、“沖”の家へ放火を始めた。そのことがきっかけで、シュウジの家庭は崩壊し、シュウジの運命の歯車が狂っていく。


「どうして、人間は死ぬの?」と何度も聞くシュウイチ。このシーンから始まる物語は始まる。それがメインテーマなのだろうか。この物語には、「死ぬ」「死にたい」「殺す」「殺したい」というフレーズが何度も出てくる。その中で「誰か一緒に生きて下さい」というシュウイチのメッセージだけが際立っていたような気がした。生きたいのに上手に生きられない、そんな少年の物語なのだろう。しかし、この作品は、原作が言いたいことを上手く表現出来ていたのだろうか。、「死ぬ」「死にたい」「殺す」「殺したい」の繰り返しで、私は少々うんざりしてしまった。

まず、子供たちの演技が下手すぎて興ざめした。大勢の中でひとりだけが下手ならまだ許せる時もある。しかし、この作品の子供たちはみんな下手過ぎた。4人出てきて、4人ともセリフが棒読みだとは…。まるで学芸会の演劇を観ているようだった。周りの大人たちがいくら良い演技をしていても、あれでは良い作品として成り立たない。特に、この作品の中谷美紀は特筆するべき良い演技をしていたのだが、それも手越祐也との絡みで台無しになっている気がする。人気アイドルを使いながら、単なるアイドル映画では終わらせようとしない意気込みは買うが、もう少し演技が出来るコを使って欲しかった。

監督のSABUは『弾丸ランナー』でデビューし、『ポストマン・ブルース』『アンラッキー・モンキー』と、「走る映画」を得意として撮り続けてきた。そして、今回の映画のタイトルは『疾走』。SABU監督がどんな「走る映画」を見せてくれるのか楽しみにしていたのだが、残念ながら、私にはこの映画に「疾走感」を感じることは出来なかった。SABU監督にはずっと走り続けていて欲しかったのだが、『幸福の鐘』で走ることをやめ、歩いてしまったのが間違いだったのだろうか。あえて『疾走』という言葉を感じられたシーンは、“沖”で自転車が壊れてしまい、泣いていた小学生時代のシュウイチが“鬼ケン”(寺島進)にトラックに乗せてもらい、“浜”まで暴走するシーンだけだった。
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2005年12月21日

もう一度きちんと観たい◆『真夜中のピアニスト』4

ed45dde8.jpg12月21日(水)名演小劇場にて

トム(ロマン・デュリス)は28歳。放埓な父親の後を継ぐことを宿命づけられているように、今は、薄汚れた時として残酷な裏切りが横行する不動産の裏ブローカーの世界に生きている。しかし、彼の心には、何時の日にか、母親のようなピアニストになりたいという夢が眠っていた。その夢は突然動き出す。ある日、彼は昔の恩師に出会い、再びピアニストの道を進められたのだ。心を揺さ振られた彼は過酷な裏家業と仲間から離れようと試みる。彼を助けるのは、ただ一人。フランス語を話すこともできない中国からやってきた女流ピアニストのみ。音楽だけを唯一の会話として、二人は、ピアニストのオーディションを目指して、練習に励むが、その前には幾つもの困難が立ちはだかっていた…。


2005年ベルリン映画祭の銀熊賞(最優秀音楽賞)受賞・銀熊賞ノミネート作品。真っ白いシャツにべっとりとした赤い血が付き、彼の右手の甲は「何か」を殴ったように痛々しく血が流れている。宣伝用のチラシの血なまぐささとは裏腹な『真夜中のピアニスト』という日本語タイトル。そして、そのチラシに書かれた「僕から音楽があふれ出す」というキャッチフレーズ。いつもトラックバックでお世話になっている、「Swing des Spoutniks」の丞相さんから「復讐を一つのテーマにした作品」という情報もあり、予告編も観ていなかった私にはどういう映画か全く想像が出来なかった。丞相さんからの薦めもあったので、公開終了ギリギリになってしまったが、観に行ってきた。

と・こ・ろ・が!
上映時間ギリギリに劇場に着き、外の凍えるような寒さから暖房の効いた暖かい劇場内に入ったとたん、ものすごい眠気に襲われてしまった。それでも頑張って目を見開いて観ていたのだが、途中でとうとう意識を失った。どれだけの間、眠っていたのかは分からない。たぶん、全体の1/2〜1/3くらいの時間だったと思う。途中、大きな音楽の音で完全に目が覚め、それからラストまではしっかり観たのだが、ちゃんとした感想はとても書けない。公式サイトでストーリーを確認したものの、この作品は主人公の心理描写がメインなのだ。その気持ちの変化という重要な部分が欠落している私の頭の中では、ラストまで主人公の気持ちに追いつくことが出来なかった。

ただ、ストーリーを確認し、「そういう話だったのか」と理解した時、もう一度、この作品をきちんと見直してみたいという気持ちになった。でも、名古屋では明後日で上映は終わり、劇場で観ることはもう無理なので、WOWOWで放映されるのを待つことにしようと思う。いつもなら、こんな中途半端な鑑賞には良い評価はしないのだが、今回は「もう一度観たい」という気持ちを込めて、★4つをつけてみた。
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2005年12月20日

クリスマスは奇跡が起こる日?◆『NOEL(ノエル)』3

0edcf647.jpg12月19日(月)ゴールド劇場にて

クリスマス・イヴのニューヨーク。40代の独身女性ローズ(スーザン・サランドン)は、病院で認知症の母親の看病に明け暮れていた。年下の同僚にデートに誘われても、あまり乗り気にはなれない。彼女には、忘れることが出来ないクリスマスの悲しい思い出があったのだ。あてもなく夜の街へ出かけ、桟橋に佇むローズに、母親の隣室の見舞い客が声を掛ける。

警察官のマイク(ポール・ウォーカー)は、美しい婚約者ニーナ(ペネロペ・クルス)と、幸せなイヴを過ごすはずだった。しかし、彼の嫉妬深さは彼女の誤解を生み、怒った彼女は部屋を飛び出してしまう。そんなマイクに、カフェで偶然出会った老人アーティ(アラン・アーキン)は、執拗に付きまとう。最初は疎ましがっていたマイクだったが、ニーナの去った部屋に彼を招きいれ、彼の話を聞くことにした。

家賃を滞納し、大家から追い出されそうなジュールズ(マーカス・トーマス)は、14歳のクリスマス・イヴが忘れられない。母の再婚相手に殴られて病院に緊急入院したジュールズは、スタッフが開いてくれたクリスマスパーティで、生まれて初めて温かいクリスマスを迎えたのだ。もう一度、その時間を体験してみたいと思った彼は、自らを傷つけて、その病院に駆け込む。


日本ではクリスマス・イヴは恋人たちのもののように受け取られているが、アメリカなどでは家族や親戚が集まって、キリストの誕生をお祝いをする日だ。この作品は、そんなアメリカ・ニューヨークでのクリスマス・イヴを寂しい気持ちで過ごさなければならない人たちの群像劇になっている。日本人が「一緒に過ごす恋人が居ない」といっているのとはワケが違う。彼らには「一緒に過ごす家族が居ない」のだ。そんな寂しいクリスマス・イヴを送っている人たちが、一晩のうちにすれ違い、絡み合い、「クリスマスだからこそ起こりうる奇跡」をテーマに、その中で幸せなクリスマスの過ごし方に気づいていく。「クリスマス=奇跡が起こる日」という考え方は、やはり、キリスト教を信仰する人たちの考え方なのだろうか。

クリスマスものの群像劇といえば、やはり『ラブ・アクチュアリー』を思い出す。『ラブ・アクチュアリー』が佳作だっただけに、この『NOEL(ノエル)』が『ラブ・アクチュアリー』の二番煎じ的な印象になってしまっているのも否めない。特に、この作品では「奇跡」がメインテーマになっているため、現実離れした話も語られている。群像劇にリアリティを求める私には、少々行き過ぎた演出だったようにも感じられた。

とは言え、どんな寂しい思いをしてクリスマス・イヴを過ごす人にも、ちょっとした考え方の転換で、それはハッピーなものになり得るいう答えを導き出してくれて、観ていて少しだけ幸せになれる作品だった。
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2005年12月18日

銃に魅せられ、破滅していく若者たち◆『ディア・ウェンディ』3

7b9910c4.jpg12月16日(金)試写会(伏見ミリオン座1)にて

アメリカの小さな炭坑町。坑夫として生きることこそが男の証のように目されているその町で、ディック(ジェイミー・ベル)はそれに反発し、スーパーマーケットで働き始める。そんな中、彼はある玩具の銃と出会った。しかし、同僚のスティーヴィーからそれは本物の銃と知らされる。平和主義のディックは、それに"ウェンディ"と名付け、肌身離さず持っていても、決してそれを人前で使うことはなかった。やがて、ディックとスティーヴィーは、「銃による平和主義」を秘かに広めるため、"ダンディーズ"を結成。内気だが頭の切れる少女スーザン、下肢を失い松葉杖が手放せないヒューイ、彼の弟でいじめられっ子のフレディが仲間に加わり、それぞれが"ダンディーズ"に相応しいクラシックな銃を手にするのだった。それまではこの町では「負け犬」に過ぎなかった彼らの身体は、銃という精神的な支えを得て、いつしか自信が漲るようになる。そんなある日、ディックはクラグスビー保安官から、幼馴染みのセバスチャンの保護観察を命じられる。セバスチャンが殺人を犯したというのだ。そして、彼を"ダンディーズ"に加入させたことで、ディックたちは思いがけず破滅の道を歩み始めることになる。


人間の心理とは不思議なもので、私は暗い夜道を歩いている時、長傘を持っていると、自分が5倍くらい強くなった気分になる。敵に打ち勝てる「武器」を持っているような気になるのだ。きっとディックたちも同じような気持ちだったのだろうな、ということがよく分かる。例えそれを使わないと決めていても、銃を持っているだけで誰よりも強くなったような自信が沸いてきたに違いない。

しかし、やはり銃社会であるアメリカを描いた作品だけあり、彼らがどうしてそこまで銃を愛せるのか、その心理は分からないし、銃撃戦のシーンなどは、どうしてそこまでやらなければならないのか、全く理解出来ない。アメリカという国をちゃんと理解してこそ、この映画のやるせなさが理解出来るのではないだろうかと思う。

ディックを演じたのは、『リトル・ダンサー』のビリー・エリオット役で脚光を浴びたジェイミー・ベル。イギリス人の彼が、今回はアメリカ英語で、アメリカン・ボーイに扮しているところが見所のひとつだ。脚本は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー。その脚本を『セレブレーション』で1998年にパルムドールを受賞している《ドグマ95》の同士、トマス・ヴィンターベアが監督している。アメリカを舞台にしているとはいえ、これはデンマーク映画で、デンマーク=ドイツ=フランス=イギリスの合作となっている。遠まわしに、アメリカの銃社会を批判している映画ともいえよう。
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2005年12月17日

二匹の行く末に不安を感じた◆『あらしのよるに』3

ece8eb0e.jpg12月14日(水)TOHOシネマズ津島にて

ある嵐の夜、仲間とはぐれたヤギのメイ(声:成宮寛貴)は、壊れた山小屋で雨風をしのいでいた。するとそこへ、同じように嵐から逃れてきた、もう一匹の動物が現れる。真っ暗闇の中、お互いに相手の顔も見えず、雨に濡れて鼻風邪をひいてしまい、ニオイも分からない。互いに一人ぼっちで心細かった二匹は、話をするうちに仲良くなり、次の日に「あらしのよるに」を合い言葉に、その小屋の前で再会を約束する。しかし、そこに現れたのは、オオカミのガブ(声:中村獅童)だった。本当なら決して仲良くなれない二匹なのだが、嵐の夜、小屋での一夜を共にしたことで、二匹は「秘密の友達」になることにした。しかし、二匹が仲良くしていることは、あっという間に仲間に知れ渡り、メイとガブのそれぞれの仲間は、彼らに相手を上手く利用させようとする。


原作は全6巻から成る絵本だという。今回の映画化を受けて、端折っている部分があったのかもしれない。私には、いつも仲間からバカにされていたガブが、自分を頼ってくれる友人のメイが出来て、仲間の元を離れる覚悟をしたのは分かったが、友達にも囲まれて特に不自由を感じていなかったメイが、仲間や家族を捨ててまで、ガブと一緒に新しい土地を目指そうとした気持ちがよく分からなかった。彼らがオス同士だというのが、余計にそれを感じさせたのかもしれない。これが、例えばメイがメスであり、ガブに恋愛感情のようなものを持っていたとすれば、もう少し違った観方が出来たのかもしれないが…。それとも、私が女性だから、男同士の固い友情というものが理解出来なかっただけなのだろうか。

以前、『マダガスカル』の感想で「エサに飢えたアレックス(ライオン)が、本来の野生に戻りかけているところは面白かったが、あと一歩踏み込むくらいの"毒"を盛って欲しかったのは事実」と書いたが、この『あらしのよるに』では、その部分がとても上手く表現されていたと思う。草食のメイは、ガブが肉を食べなければ生きていけないことを知りながらも、動物を食べて生きていることが嫌で仕方ない。メイが「分かっているけど…嫌なものは嫌なんです!」と言って拗ねるシーンは、これから先、二匹が一緒に生きていくことの難しさを感じさせた。

私はもう、真っ直ぐな気持ちでこのようなストーリーを受け止める心を失っているのかもしれない。この物語を「食うもの」と「食われるもの」が友情を育む美談としては、受け取れなかった。普段、群れで生活している動物が、友情のためにその群れを離れて新しい世界を目指す…ということに、かなりの無理を感じてしまい、この作品を果たしてハッピーエンドと受け取っていいのだろうかと、疑問が残ってしまった。

ガブ役の中村獅童は素晴らしく上手かったと思う。こんなふうに声優までをこなしてしまうなんて、この人の役の幅の広さを感じた。それに比べると、メイ役の成宮寛貴はもう一歩…というところかな。中村獅童が上手かっただけに、余計に声優としての未熟さが目立ってしまった気がする。
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2005年12月15日

主人公の気持ちが掴めない◆『誰(た)がために』2

4c3c9763.jpg12月14日(水)TOHOシネマズ津島にて

写真店を営む民郎(浅野忠信)のところに、幼なじみのマリ(池脇千鶴)が友人の亜弥子(エリカ)を連れて写真を撮りに来た。マリは幼い頃から民郎のことが好きだったが言い出せず、いつの間にか民郎と亜弥子は惹かれ合うようになる。やがて亜弥子は妊娠し、二人は結婚するが、幸せな日々は長く続かなかった。亜弥子が見知らぬ少年(小池徹平)に突然襲われたのだ。


観終わった時に、すごい脱力感に襲われた。一体、この映画は何だったのだろうと思った。監督が描きたかったことはとてもよく分かるのだが、私はこの映画に拒絶されたように、ひとり取り残された気分だった。「復讐もの」ということは、観る前から知っていた。97分という比較的短い作品なのに、その「復讐」に至るまでの経緯を説明するのに半分近くの時間を使っていて、残りの半分の時間で主人公が「復讐」に目覚めて実行していく。これだけ丁寧に説明していれば、本当なら主人公の気持ちにすんなりと入り込めるはずなのに、それが私には出来なかった。

物語は民郎と亜弥子が出会うシーンから始まり、やがて二人が恋人同士となり、結婚する。公式サイトのあらすじには、「亜弥子と民郎は一目で惹かれあう。共に心に欠けた部分を持っていた二人は、それを埋めるように深く愛し合い、やがて亜弥子は妊娠する」と書かれているが、私にはそう思えなかった。私には二人がどうしてそこまで惹かれ合ったのかが分からなかったのだ。亜弥子役のエリカの棒読みセリフのせいか、彼女がどんな女性なのかがよく分からなくて、どこか謎めいた不思議な女性に見えた。一方の民郎役の浅野忠信も、演技の上で恋愛感情を表現するのがあまり上手くないのかもしれない。妙に淡々としていて、本当に亜弥子を愛しているのかどうか分からなかった。

…というより、お互いに「自己」を持っていて、相手にのめりこむタイプの二人ではない気がした。その二人が突然、「子供が出来たから結婚する」と言って、そのお披露目会でみんなに祝ってもらっている。その突飛さについていけなかった。その前、亜弥子は子供を産むことを拒んだが、民郎はそんな亜弥子に徹底的に反対して、結婚までこじつける。私は民郎がそこまで亜弥子のことを深く愛しているとは思っていなかったのだ。

それまでの民郎の気持ちについていけなかったので、そこからの彼の気持ちにもついていくことが出来ない。後半、復讐に燃える民郎もやはり淡々としていて、心の底の怒りが伝わってこない。これは単純に、この作品が初監督作だという、日向寺太郎監督の力量不足なのだろうか。それとも、私の理解力のなさなのだろうか。結局、ラストシーンが意味するものもよく分からないまま終わってしまった。

亜弥子を襲う少年役の小池徹平も淡々としていた。しかし、これはよく分かった。普段、よく耳にするニュースの少年と同じだ。これが現代の少年の姿なのだ。不可解な行動と、自分の犯した罪の重大さが理解出来ない幼さと無神経さ。主人公が一番理解出来なかった部分が、この物語の中で、私にはなぜだかよく分かった気がする。

全体的に冷たい空気ばかりを感じ、あまりにも淡々としていたこの作品の中で、唯一、生き生きとした温かい風を吹き込んでいたのが、池脇千鶴の演技だった。私は『ジョゼと虎と魚たち』で彼女の演技の魅力に目覚めたが、この『誰がために』の中でも、さりげないセリフのひとつひとつがとても自然で、何て演技の上手いコなんだろうと思った。これからの出演作も楽しみだ。
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2005年12月12日

マジメすぎて面白みが足りない◆『ミリオンズ』3

ミリオンズ12月10日(土)シルバー劇場にて

母親が亡くなり、父親と共に8歳のダミアンと10歳のアンソニーは、新しい町へと引っ越してきた。ある日、引っ越しで使った段ボールで線路近くにダミアンが作った秘密基地に、スポーツバッグが降ってきた。バッグの中身は22万ポンドのお札だった。しかし、イギリスの紙幣はユーロに変わる目前。ポンド札は、数日後には紙くず同然になる。信心深いダミアンは、これは神様からの贈り物だと思い、貧しい人たちに分け与えようとするが、現実主義者のアンソニーは欲しいものを片っ端から買いまくる。そんなことをしているうち、彼らのまわりを怪しい男がうろつき始めた。実は、空から降ってきたお金の出所は組織的な列車強盗のもので、彼らがそのバッグを追っていたのだった。


『トレインスポッティング』のダニー・ボイル監督が、「自分の子供たちに堂々と見せられる映画を」というコンセプトで作った作品らしい。主役は二人の少年と22万ポンドのお金。このお金が「数日後には紙くず同然になる」というのが、この映画のポイントだと思う。

私ならどうするかな、と考えた。多少は国民性の違いはあるかもしれないが、私以外でも普通の大人なら警察に届けると思う。だって、そんなの絶対にヤバいお金だと思うし、持っていたら誰かに追われないかとビクビクしなければならない。一刻も早く、自分の手元から手放したいと思うだろう。しかし、そんなことより、日本人だったら「お金を拾ったら警察に届ける」ということは、子供の頃からちゃんと教育されてきているはずのことなのだ。でも、そのお金を拾ったのはイギリス人の子供だった。イギリス人の子供がどういう教育をされているのかは分からないが、拾ったから警察に届けるということも、持っていたら危険だということもみじんも考えず、残された数日間でその大金をどうやって使うかを考える。

しかし、監督が「自分の子供たちに堂々と見せられる映画を」というコンセプトで作った作品なので、決して物語は悪い方向へは向かわない。人間にとって一番大切なものは何なのか、ということ。お金は人を幸せにするのだろうか、ということが、この映画では問われている。

さすがダニー・ボイルらしく、映像には凝っていたが、ストーリーは平凡だったような気がする。オチもキレイにまとめすぎている感があり、確かに「自分の子供たちに堂々と見せられる映画を」という監督のコンセプトには沿っていたが、ダニー・ボイル作品にしてはあまりにも毒がなさすぎて、ちょっと物足りなかったというのが本音だったりする。

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2005年12月11日

スタイリッシュな林海象ワールド◆『探偵事務所5』4

8b265e55.jpg12月8日(木)TOHOシネマズ津島にて

創立60周年を迎える“探偵事務所5”。探偵たちは5を先頭にする三桁の番号を持ち、互いをその番号で認識しあっている。そんな探偵たちの中に、『少年探偵団』の小林少年を祖父に持つ、新米探偵591(成宮寛貴)が加わった。彼の最初の依頼人は、会長の孫娘である宍戸瞳(貫地谷しほり)。彼女の依頼は、「『楽園へ行く』の言葉を残し、行方不明になった親友を捜して欲しい」というものだった。探偵591は、その失踪に、悪徳美容外科として名高い「カイン美容外科」が関わっていることを突き止める。しかし、「カイン美容外科」に関する事件については、探偵522(宮迫博之)が既に独自で調査を行っていた。せっかくあと少しで「カイン美容外科」の悪事を暴けるところだったのに、探偵522は、探偵591と瞳に捜査を引っかき回されてしまう。


『私立探偵濱マイク』シリーズの林海象監督が、“探偵事務所5”で働く探偵たちの活躍を描いた新シリーズの探偵ドラマ。『私立探偵濱マイク』シリーズを欠かさずに観ていた私には、新シリーズの展開はちょっと嬉しいニュースだった。しかも、探偵役には成宮寛貴と宮迫博之という、これまた私が好きな役者たちが扮し、期待を盛り上げた。

林海象監督という人は、ストーリーよりも映像や音楽にこだわりを持つ人なんだな、と思う。探偵たちは皆、黒い帽子に黒縁メガネと黒のスーツ姿という揃いのユニフォームを身にまとっている。探偵があのスタイルでは目立ち過ぎだろうと突っ込みを入れたくなるが、それを否定すると、この映画を全否定してしまうことになるので、あえて言わない。新米探偵591が与えられた個室には、ダイヤル式の黒電話と旧式のタイプライターが置かれていて、クルマはスバル360。映像も音楽もスタイリッシュなのに、細部に渡ってレトロな雰囲気を壊そうとしていない。これは『私立探偵濱マイク』シリーズから引き継がれた、林海象ワールドなのだろう。

“探偵事務所5”の創立者であり会長の探偵500を宍戸錠が扮していたり、「カイン美容外科」への内偵モリヤマに永瀬正敏が扮していたり、探偵十訓や、探偵522の個室に貼ってあった映画のポスターなど、『私立探偵濱マイク』とのリンクも面白かった。私が気づいたのはその程度だったが、探してみればもっと色んなところでリンクしているのかもしれない。

今回の映画では、「第1話・楽園」と「第2話・失楽園」の関連した2つのストーリーを描いていたが、シリーズ化して今後も続いて行きそうな終わり方だったので、今からそれを観るのも楽しみだし、公式サイトの「ネット版」では、他の探偵たちのサイドストーリー(短編映画)を動画で見ることが出来る。(私はまだ1本しか観ていないが、全部で26本配信されるらしい。現在は4本を配信中)

なかなか手の込んだ作品だと思う。今後にも期待したい。
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2005年12月10日

至上最大の夫婦喧嘩◆『Mr.& Mrs.スミス』5

f6206ae6.jpg12月6日(火)TOHOシネマズ木曽川にて

南米で運命的な出会いをし、一瞬で情熱的な恋に落ちた建設業のジョー(ブラッド・ピット)とコンピューター・プログラマーのジェーン(アンジェリーナ・ジョリー)。ふたりはすぐに結婚することを決意する。しかし、その5〜6年後、その夫婦にも倦怠期が訪れていた。しかも、ふたりにはお互いに隠し続けていた重大な秘密があった。建設業というのも、コンピューター・プログラマーというのも嘘。二人は別々の組織に所属している殺し屋だったのだ。そして、二人がある殺しに携わったことから、お互いの正体を知ってしまう。殺し屋の世界では、自分の正体を知った者を、48時間以内に始末しなければならないというルールがある。ジョーとジェーンは夫婦という壁を取り払って、お互いを殺し合うはめになった。


私がハリウッドスターの中で一番好きな俳優(女優)は、アンジェリーナ・ジョリーだ。彼女が『ボーン・アイデンティティ』の監督、ダグ・リーマンの最新作でブラッド・ピットと共演し、派手なアクションを見せてくれるということを知ってから、ずっと楽しみに待っていた作品だった。どんな役でも卒なくこなす彼女だが、やはり勝気な女性の役がよく似合う。しかも、今回の彼女は、これまでで出演してきた作品の中でもとびきり美しい。映画の中だけでなく、プライベートでもブラッド・ピットが彼女に夢中になってしまうのもよく分かる。

映画の設定はひとことで言えば「あり得ない」。殺し屋同士がお互いの素性を知らずに恋に落ちて結婚するという偶然から「あり得ない」のひとことで片付けてしまえば簡単なことだし、ジェーンが寝ている時も常にメイクばっちりなのも「あり得ない」。5〜6年も一緒に生活していて、家の中に大層な仕掛けがあったり、数々の武器を隠し持っているのに、それにお互いに気づかないというのも「あり得ない」と思う(でも、お互いのことを干渉し合わない相手なら、それはあり得るのかも…)。一度はめちゃめちゃに破壊されたジェーンの車が無傷で再登場するなど、細かいところを取り上げれば突っ込みどころは満載だったが、監督もあえてそういう細部にはこだわりを持っておらず、逆にそれで何を見せたいかがはっきり分かった。つまり、この映画は「徹底的にあり得ない話」であって、その上に成り立っているので、それにリアルなものを求めてはいけないのだ。

そんな「あり得ない話」を、私はかなり楽しめた。ジョーとジェーンのバトルは、まるで、ど派手な夫婦喧嘩を見ているようで、殺し屋同士がお互いを殺そうとしているようには見えない。ジョーとジェーンの間では、夫婦の関係が常にジェーンに主導権があったように、殺し合いをしていても、ジェーンのカッコよさに比べて、ジョーは「腕は立つが情けない男」に徹していて、そのバランスがとてもいい。アクションシーンも迫力があり、且つ、それに夫婦間のいざこざを交えてコミカルに仕上げている。お互いの素性を知った二人が、それまでの5〜6年を振り返りながら、それが嘘で固められた生活であったことを告白し合うシーンは面白く、派手なカーバトルを繰り広げながらの夫婦喧嘩には、声を出して笑ってしまった。

アンジェリーナ・ジョリーのファンだから…という点で、ちょっと甘めの評価になってしまうが、私には大満足出来た娯楽作品だった。
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最新記事
新作映画満足度

【満足度の基準】
注:映画の良し悪しではなく、
桂木ユミの満足度です。

★★★★★「すごくいい」
★★★★「いい」
★★★「まあまあ」
★★「金返せ」
★「時間を返せ」

【2006年8月】
ラフ ROUGH★★★
ゆれる(2回目)★★★★★
美しい人★★★
僕の、世界の中心は、君だ。★★★
花田少年史★★★
佐賀のがばいばあちゃん★★★
ゆれる★★★★★
トランスアメリカ★★★★
ユナイテッド93★★★★
パイレーツ・オブ・カリビアン2★★
幸せのポートレート★★
時をかける少女★★★★★
ゲド戦記★★

【2006年7月】
ラブ☆コン★★
ハチミツとクローバー★★
日本沈没★★★
スーパーマン・リターンズ★★★
タイヨウのうた(2回目)★★★★
ブレイブ・ストーリー★★
やわらかい生活★★★
ステイ★★
カーズ(字幕版)★★★

【2006年6月】
着信アリ Final★★
ホワイト・プラネット★★
M:I:3★★★
DEATH NOTE(前編)★★★★
LIMIT OF LOVE 海猿★★★★
バルトの楽園★★★
インサイド・マン★★
オーメン★★★
トリック劇場版2★★★
初恋★★★
花よりもなほ★★★
ダ・ヴィンチ・コード★★
間宮兄弟★★★★
ポセイドン★★★
トランスポーター2★★★
デイジー★★★
GOAL!★★★★

【2006年5月】
タイヨウのうた★★★★
夢駆ける馬ドリーマー★★★
嫌われ松子の一生★★★★
かもめ食堂★★★★
ナイロビの蜂★★★★★
ピンクパンサー★★★★
Vフォー・ヴェンデッタ★★★★
チェケラッチョ!!★★★
グッドナイト&グッドラック★
ぼくを葬(おく)る★★★

【2006年4月】
陽気なギャングが地球を回す★★
明日の記憶★★★
ニュー・ワールド★★
ホテル・ルワンダ★★★★
ブロークバック・マウンテン★★★
ファイヤーウォール★★★

【2006年3月】
白バラの祈り★★★★
南極物語★★★
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!★★★★
子ぎつねヘレン★★★
シリアナ
クラッシュ(2回目)★★★★★
イノセント・ボイス-12歳の戦場-
★★★★
ウォーク・ザ・ライン/君につづく道★★★

【2006年2月】
クラッシュ★★★★★
スパングリッシュ★★★★
カミュなんて知らない★★★★
ブラックキス★★
ミュンヘン★★
ジャーヘッド★★★★
ピーナッツ★★★★
天使★★★★
男たちの大和/YAMATO
★★★★
レジェンド・オブ・ゾロ★★★

【2006年1月】
オリバー・ツイスト★★★★
アメノナカノ青空★★★
博士の愛した数式★★★★
ロード・オブ・ウォー★★★
歓びを歌にのせて★★★
スタンドアップ★★★★★
プライドと偏見★★
キング・コング★★
THE 有頂天ホテル★★★★
SAYURI★★★
ディック&ジェーン 復讐は最高!★★★
チキン・リトル★★★


これ以前のものはこちら
(旧作もこの中にあります)
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